理念と目標
京都大学医学部は、医療の第一線で活躍する優秀な臨床医、医療専門職とともに、次世代の医学を担う医学研究者、教育者の養成をその責務とする。
京都大学医学部が育てるのは、単に既存の知識を応用して医療にあたるだけでなく、病気など医学事象の背後にあるものを見抜き、自分の頭で考え、新たな知を創出できる人間、また、広く社会と人間行動を理解し病める人の感情を洞察できる人間、社会全体の健康をめざし高い倫理観を持って行動する人間である。
また、これを人類すべてに発信できる国際性豊かな人間を育てることも我々の使命である。
アドミッションポリシー
京都大学医学部は、1899年(明治32年)に京都帝国大学医科大学として創立された百有余年の歴史と伝統持つ医学部として、世界に誇る指導的な医学者、医学研究者を輩出してきました。医学部医学科は、京都大学が創立以来築いてきた自由の学風を継承し、医療の原点である「人を愛する」精神のもと、学生の自主性、自己啓発を教育の主眼として、個性豊かな創造性の涵養を目指しています。
このような方針を踏まえ、世界の医学・医療の発展を担い、人類の健康と福祉に貢献できる人材を育成するために、以下のような学生の入学を期待します。
医学部医学科が望む学生像
- 自ら課題を発掘する好奇心や探究心、それを解決しようとする主体性を持っている人
- 高い倫理性と豊かな人間性を備え、他者との協調性を持っている人
- 優れた知的能力とともに、国際的視野を持っている人
入学する学生には高等学校等において、教育課程の教科・科目の習得による基礎学力に加え、分析力や俯瞰力により、これを高度な学びへと展開できる向学心を培うことを求めます。医学部医学科が望む学生を選抜するために、一般選抜(前期日程)は、大学入学共通テスト並びに個別学力検査及び面接試験により、総合的に合格者を決定します。
また、医学・生命科学に深い関心を持ち、真摯な姿勢、強い熱意を持って真理を探究し、世界の医学をリードする医学研究者としての資質・適性を持つ人材を求め、特色入試を実施します。高等学校での成績および英語能力において所定の基準を満たす学生を対象に、高等学校での取り組みや医学研究に対する考えに関する報告書等の提出書類並びに口頭試問及び面接試験により、合格者を決定します。
カリキュラムポリシー
京都大学医学部医学科は、ディプロマ・ポリシーで示した知識と能力を学生が修得できるようにするために、以下の方針に基づいた教育課程を編成・実施します。
医学部医学科が望む学生像
- 1~2年次の全学共通科目で文理広範囲に亘る教養を積むと同時に、医学概論・生物系授業・早期体験実習等を通して医師・医学研究者としての将来像を描く。MD研究者育成プログラム等で早期から医学研究に従事する機会や、英語による医学・生物学の講義などで国際性を涵養するプログラムを提供する。
- 2年次では分子、細胞、組織などのレベルに分けて人体の構造・機能・発生を体系的に学習する基礎系講義(コア・ベーシック)を提供し、正常な人体の営みの統合的理解を進める。
- 3〜4年次では、疾患との関連の深い基礎系・社会医学系講義(アドバンスト・ベーシック)を経て、臓器別システムの病態に関して臨床的な視点から学ぶ。マイコース・プログラム(最長3ヵ月の自主研究期間)では、本学の研究室あるいは国内外の研究機関・医療機関などで研究活動に従事する。さらに、臨床実習入門コースで臨床実習に必要な基礎的素養の修得を進める。
- 5〜6年次で行う臨床実習では、単なる見学ではなく、患者を受け持ち、実際の医療現場でチーム医療に参加し、自律的に臨床能力を身に付けることの出来る参加型実習を行う。加えて、イレクティブ実習期間を設け、学生の興味に応じて国内外の医療機関・教育機関で実習を行い、臨床能力の向上を目指す。
なお、教育課程の体系性や構造については、ナンバリングとコースツリーで明示します。
この他、医学研究者を目指す者を対象に、通常カリキュラムと併行してMD研究者育成プログラムを設け、研究者としての基本的能力を修得するコースを提供します。
学修成果の評価について、各科目の到達目標、成績評価の方法はシラバス等において明示します。4年次後半には、それまでに身に付けた知識と技能を医療系大学間共用試験(CBT、OSCE)において検証します。臨床実習後には、臨床能力を医療系大学間共用試験(Post-CC OSCE)において検証します。
ディプロマポリシー
京都大学医学部医学科は、世界に誇る独創的な学術研究を推進することができる医学研究者及び医学・医療の分野で指導的な役割を果たす医師・教育者の育成をその責務としています。
こうした人材を育成するために、京都大学医学部医学科では、所定の課程を修め、下記の知識と能力(コンピテンシー)を身に付けた者に学士(医学)の学位を授与します。
- 独創的な発想と新しい課題への挑戦
科学の既存状況に満足せず、自ら課題や興味を発見し、科学的探究に真摯に取り組む研究者としての必須の能力を身に付けること。
- グローバルな活躍
国際社会のなかでの日本の位置や役割を捉えられる幅広い教養と語学力を身に付け、他国の医師や医学研究者と協働し、日本と世界でリーダーシップをとる態度を身に付けること。
- 豊かな知識と技能
幅広い知識・技能を修得し、医学・医療に関する優れた思考や行動に結びつけること。受動的学習から脱却し、理論と実践とを有機的に結びつける「学ぶ能力」を身に付けること。
- 生涯学習
医師・医学研究者としての将来のキャリア像を見据え、自ら学習課題を設定し、学習に取り組み、その成果を評価して次の課題に繋げる一連のプロセスを、自己主導的に行うことができること。
- 医師としての使命感
医師・医学研究者に対する患者と社会からの期待と、医療に求められる社会性・倫理性を意識し、適切な判断や行動を考え、臨床研修に入る準備ができること。
- 患者の視点
患者の生活と気持ちを理解できる想像力を身に付け、知識と技能を総合した問題対応能力を発揮して、卒後の臨床研修において患者の身体的・精神的苦痛を少しでも和らげる患者ケアができるようにすること。
- 多職種での協働
医療や医学研究が多職種との協働(チーム)によって成り立つことを理解し、互いの専門性を最大限に活かし、臨床研修における優れた実践と医療安全に繋げること。
- コミュニケーション
患者や医療者の意図、感情、考え等を理解し、互いを尊重した上で、自身の考えを相手に効果的に伝える工夫や配慮ができること。