産学共同講座Collaboration

産学共同講座

先端医療基盤共同研究講座(アライアンス・ステーション)
-アステラス製薬との創薬研究産学連携基盤―

我が国の製薬企業では、2000年頃まで、自前で創薬研究を遂行し、臨床開発へ進めることが一般的でした。21世紀に入り、医学・生命科学が急速に進歩し、研究領域の融合がどんどんと進む中、製薬会社が自社のみで最先端の生命科学や技術を網羅的にカバーして創薬研究を実施することは困難になって来ました。このような創薬環境変化に対する解決策の一つとしてオープンイノーベンション活動を取り入れ、多様な研究機関と協働しながら創薬研究を進めることが一般的となりつつあります。京都大学とアステラス製薬は、いち早く上記変化に対応して、2007~2017年にオープンイノベーションの拠点である次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点(AKプロジェクト*)を設置し、ここでの協働を通じて臨床/基礎/創薬の研究における連携体制を構築するとともに、多くの成果を創出してきました。そして2017年、我々はこのAKプロジェクトの活動で培われた共同研究体制、ネットワークおよび相互信頼を基盤に、京都大学とアステラスとの連携を更に進化させる形でアライアンス・ステーション(Aステーション)を開設しました。Aステーションは先端医療基盤共同研究講座を実施基盤として、すでに10年を超える京都大学とアステラス製薬との強固な連携体制を活かし、アステラス製薬における創薬研究ノウハウと京都大学における最先端のサイエンスおよび多彩な技術を融合させることで、種々の疾患領域を対象とした複数の共同研究プログラムの遂行を目指しています。我々は、Aステーションを軸とした京都大学とアステラス製薬との産学連携をさらに進化させ、「患者さんの価値となる新薬」の創出を一日も早く成し遂げたいと考えています。
大学で行われている病態と標的分子の関連性の解明は、まさに創薬研究の起点となる研究です。特に、診断や治療が日々行われている大学病院との機動的かつ柔軟な連携により「ヒトの疾患や病態の探求」や「新規薬剤の有効性予測の向上」など、製薬企業単独では実施が難しい研究を推進したいと思っています。私たちは、また、新たな治療手段(新規モダリティ)あるいは創薬研究に必要となる基盤構築にも大学等の研究機関における成果を活用したいと考えています。Aステーションは世界トップレベルの研究を行う京都大学の研究者の皆様の参加をお待ちしています。

スタッフ
執行責任者
成宮 周 (医学研究科 特任教授)
特定教授
 早乙女 周子
特定講師
 中溝 聡
協働機関
  • アステラス製薬株式会社
協働機関責任者
  • 黒光 貞夫 (アライアンスステーション長、医学研究科 特任教授(協働))
実施期間
  • 令和2年度から6年間

https://www.a-station.med.kyoto-u.ac.jp/(学内限定)

  • AKプロジェクト:2007年7月から2017年3月末まで、文部科学省 先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムとして、「次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点」で実施されていた京都大学とアステラス製薬の共同研究。

呼吸器疾患創薬講座(杏林製薬株式会社との共同研究講座)

呼吸器系疾患は高齢化社会を迎え、国民の健康寿命にとって大きな負担をもたらすようになりました。肺線維症、肺がん、COPD、喘息、呼吸器感染症など、多岐にわたる疾患があり、今や年間2兆円以上もの国民医療費が呼吸器系疾患のために費やされています。しかしながら、医療の需要が膨大化する一方で、呼吸器の分野における治療薬の開発はまだ十分とはいえません。その理由の1つは肺の構造が複雑なことが挙げられます。肺は多数の枝分かれをした気道とその奥には3億個に及ぶ肺胞があり、さらにその裏側には、微細な血管網が張り巡らされた構造をしており多種類の細胞で構成されています。この複雑な構造には体中の酸素・二酸化炭素のガスを交換する機能と、病原体の進入経路ともなりやすい肺の免疫システムが備わっており、生命維持に欠かせないものとなっています。ただ、その複雑さのため、細胞レベルでの理解が難しく、分子レベルで病態を解明する科学技術が進んだ今日でも呼吸器の分野には未だ未解明の問題が多く残されてきました。
呼吸器疾患創薬講座ではこれらの未解決の呼吸器疾患に対して、創薬開発を通じたイノベーションをもたらすことを目指します。近年、iPS細胞等を用いた再生医学の技術の発展は目覚しく、呼吸器の創薬研究においても応用が可能になりつつありますが、これらの技術はまだ基礎研究の域を出ていません。また、新しい薬を早く実用化するためには製薬企業との共同研究が欠かせません。本講座は実用化の技術をもった杏林製薬株式会社と大学の研究者、そして臨床医たちが集まって、本学の自由な校風のもと築き上げられてきた研究環境の中で、積極的に新薬の開発に取り組む目的で設立されました。

スタッフ
特定准教授
小林 亜希子
特定助教
 三河 隆太
共同研究先
  • 杏林製薬株式会社

呼吸不全先進医療講座

呼吸不全は、肺障害に起因したガス交換機能の障害、呼吸筋の機能不全、呼吸の調節異常などにより生じます。その原因疾患は多岐にわたりますが、健康寿命に影響する重要な病態です。慢性呼吸不全の治療には、薬物治療や呼吸リハビリテーション、肺移植を含む外科的治療に加えて、酸素療法や非侵襲的換気療法(noninvasive ventilation: NIV)などがあります。慢性期の治療は在宅医療が中心となりますが、その中でも在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)の利用者数は、年々増加しており、2014年時点で約16万人に達し、かつ利用者の平均年齢は70歳以上と高齢者がその多くを占めております。現在日本は超高齢社会に突入しており、今後もその利用者数が増加していくことが予想されます。近年の情報通信機器の飛躍的な発展、普及に伴い、オンライン診療を含めた遠隔診療の普及が推進されつつあり、2018年度の診療報酬では遠隔診療における「遠隔モニタリング加算」が新設されました。このように、呼吸不全に対する在宅医療、HOT管理の重要性が増している一方で、臨床に有用な生体情報モニタリングシステムは未完成であり、その構築が切望されています。本講座は、京都大学医学部附属病院と帝人ファーマ株式会社との連携により、呼吸不全の在宅モニタリングシステム構築などを通じて呼吸不全診療の向上を図る事を目的としています。

スタッフ
特定准教授
半田 知宏
特定助教
 濱田 哲
共同研究先
  • 帝人ファーマ株式会社

クリニカルバイオリソース研究開発講座

 医学研究および医薬品等の研究開発において、早い段階からヒト生体試料を用いて有効性と安全性を直接的に検証する効果的なプロセスが求められるようになってきました。またゲノム解析による精密化医療を先駆けとして、患者集団にとどまらず、患者さん個人に最適化した治療が求められる時代に入りました。今やヒト生体試料は研究開発の必要不可欠な要素です。京都大学は、医学部附属病院クリニカルバイオリソースセンターにおいて収集する患者さん、または健常者由来のヒト試料について、高度な倫理性と採取・搬送・保存等のトレーサビリティーを監督・管理する研究基盤体制として、株式会社KBBMをそのコア技術を有する複数の民間企業と共同で構築しました。このことによって、京都大学においてヒト検体が、迅速かつ効果的に研究開発に利用されるようになることが期待されます。
 クリニカルバイオリソース研究開発講座では、患者さんからいただいた残余組織からのがん細胞や正常細胞の培養技術の開発を行ってきました。今後、多数の異なる患者さんの検体に由来する培養物パネルを構築し、さらに臨床データ、OMICSデータなどの解析データを感受性試験データとインテグレーションさせることによって、新たな標的に対する新規薬剤等治療法の開発や、既存の治療法を含めてバイオマーカーを探索します。また、個別化医療に向けて、微量な生検検体からがん細胞や正常細胞を調製・培養する方法の開発や感受性試験の最適化を行います。

スタッフ
特定教授
井上 正宏
特定助教
小沼 邦重
連携企業
  • KBBM

https://cbrrd.med.kyoto-u.ac.jp/

次世代腫瘍分子創薬講座

   編集中

てんかん・運動異常生理学講座

  1. 編集中
  • 編集中

http://epilepsy.med.kyoto-u.ac.jp/

高度医用画像学講座

近年の画像診断機器、画像処理・解析技術の進歩はめざましいものがあり、深層学習を初めとする人工知能(AI)技術の導入により、画像の高精度化、画像解析の高度化が進んでいます。このような中で、得られる画像データから、臨床に貢献する画像情報を抽出・解析し、適正な画像診断を依頼医に提供することが重要です。本産学共同講座は、画像診断医と企業がタッグを組むことにより、医用画像の高度化に向けた研究を実施することを目標として設立されました。新たに導入された3テスラ磁気共鳴画像(MRI)装置と画像解析装置を基盤となる研究プラットホームとして活用し、画像処理技術の改良やAIの活用による画質の向上、画像評価・解析法の高精度化など、MRIを中心とした医用画像の高度化の達成を目指して研究を進めています。

スタッフ
特定教授
 佐賀 恒夫
特定助教
 三宅 可奈江
特定研究員
沼元 瞳
共同研究先
  • キヤノンメディカルシステムズ株式会社

認知症制御学講座
日本人創業アメリカバイオベンチャー(Cyn-K LLCとVLP Therapeutics LLC)と本学脳神経内科とのアライアンス

超高齢化社会に突入した我が国では、認知症患者が増加の一途を辿っており、その対策は国を挙げての喫緊の課題です。特にアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に伴う認知症患者が加齢依存性に増加していますが、依然これらの認知症に対する根本的治療法はありません。
本講座では、企業側共同研究者が米国で設立したVLP Therapeutics社のプラットフォームテクノロジーを使って、作製された認知症病因タンパク質を標的とするワクチンの認知症に対する効果を調べるとともに、脳の変性と老化のメカニズムを解明します。
認知症の治療には、ワクチンが適していると考えます。経済的効果のみならず、抗体価と言う客観的指標で効果の判定ができ、高齢者認知症患者さんの、飲み忘れ、飲み過ぎの心配もありません。毎日服用が必要な薬剤や、高価な抗体医療に対して、圧倒的なメリットがあります。病気の進行具合にあわせた三種類のワクチンの開発を目指します。

スタッフ
特任教授
    上野 隆司
脳神経内科教授
 高橋 良輔
特任准教授
   赤畑 渉
脳神経内科准教授
葛谷 聡
特定助教
    後藤 和也
特定助教
    福島 祐二

リアルワールドデータ研究開発講座

本講座では、2020年から2022年までに、異なる電子カルテデータを統合するCyberOcnologyシステムの臨床実装と抗がん薬による有効性評価システムとの連携、さらには在宅における患者からの自発的な有害事象であるePRO(electric patient report outcome)情報を統合する新しいリアルワールドデータ収集プラットフォームを構築しました。2023年からの3年間で、このプラットフォームをさらに発展させ、臨床検査データなどのバイオマーカーも含んだ医療ビッグデータを構築し、医療の質の改善、新しいリアルワールドエビデンスの創生を目指します。
具体的には、1) CyberOcnologyシステムによるリアルワールドデータ収集と統計解析体制の強化、2) 抗がん薬による有効性評価システムとの連携強化、3) 臨床検査データや遺伝子解析などのバイオマーカーのデータベース化、4) ePROシステムの高度化、5) 臨床試験におけるクラウド型中央画像判定システムの構築を目指します。

スタッフ
特定教授
 松本 繁巳
特定准教授 山田 敦
特定講師  坂本 亮
特定助教  江口 佳那
特定助教  川口 展子

共同研究先
  • 日本電信電話株式会社
  • キヤノンメディカルシステムズ株式会社
  • H.U.グループホールディングス株式会社
  • 株式会社インテージヘルスケア

リアルワールドデータ研究開発講座ホームページ



免疫ゲノム医学講座

既存の考えを根底から覆し時代を変革するような研究を世界に発信することを念頭にしている。誰もが見向きもしない石ころを拾い上げ、磨き上げ、ダイヤモンドであることを実証する中で、6つのCの重要性を自覚して欲しい。すなわち、好奇心curiosityを大切に、勇気courageを持って困難な問題に挑戦challengeし、必ずできるという確信confidenceを持ち、全精力を集中concentrationさせ、諦めずに継続continuationすることを体得し、世界にはばたく研究者になってほしい。

研究・教育について

ワクチンが感染症を予防できるのは、体細胞突然変異とクラススイッチ組換えという遺伝子変異がBリンパ球のゲノムに記憶として刻印されるからである。我々はクラススイッチが遺伝子断片の欠失をともなうこと、クラススイッチと体細胞突然変異を司る分子がactivation-induced cytidine deaminase (AID)であることを発見した。
我々はAIDがどのようなメカニズムでゲノム変換を起こすのかを研究中であり、DNA切断を行うのはtopoisomerase 1 (Top1) であることを見出した。さらに、転写と共役したクロマチン再構成がDNA切断に不可欠であることも明らかにした。
また、我々が同定したPD-1分子は、リンパ球の記憶や免疫寛容の制御、腫瘍免疫に鍵となる分子である。近年、ヒト型抗PD-1抗体(ニボルマブ)が メラノーマ、腎がん、肺がんに対して高い有効性を示すことが治験で示され、がん治療薬として認可されるに至った。本治療法によりがん治療法は一変したが、まだ約半数以上の患者は不応答性である。現在、抗PD-1抗体治療に対して不応答になる原因解明と、応答性・不応答性を見分けるバイオマーカーの同定に取り組んでいる。
当研究室では世界の第一線で活躍し、免疫現象の根源的な問題に取り組もうとする志の高い学生やポスドクが研究をしており、この環境の中で分子生物学的、免疫学的実験手法と生命体の思想を学び、生命を全体像として捉える力を備えた自立した研究者を育てることを目指している。

抗PD-1抗体によるがん治療の原理

スタッフ
教授
   本庶 佑
特定准教授
Nasim Begum
特定准教授
小林 牧
特定准教授
茶本 健司
特定講師
 谷口 智憲
TEL 075-753-4371
FAX 075-753-4388

http://www2.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/

デジタルヘルス学講座

デジタルヘルス学講座は、医療リアルワールドデータや、健康診断、生活習慣に関する各種のデジタルデータを用いて、疫学やデータリンケージ、可視化の手法を用いた新しい予防医療や行動変容、医療の分析評価に資する研究を実施することを目的として、2020年7月に、京都大学医学研究科社会健康医学系専攻健康解析学講座内に設置されました。

デジタルヘルス学講座は、従来のレセプトやDPC情報、疾患レジストリのみならず、昨今、診療情報のリアルワールドデータや、健康診断、生活習慣や行動に関する各種のデジタルデータが研究に使用可能となりつつあり、さらに、患者や市民と研究者との間で、スマートフォンなどを用いた電子生涯健康手帳(personal health record:PHR)によって双方向での情報流通も盛んになっている中で、疫学、データリンケージ、各種の可視化手法などのプログラム技術を用いて、新しい予防医療、行動変容、医療の分析評価に資する研究を実施いたします。

研究課題としましては、ライフコースデータの一環として乳幼児健診情報や学校健診情報からはじまるデジタルコホートを用いたDOHaD学説(Developmental Origins of Health and Disease将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定されるとする学説)に関する疫学研究、PHRを用いた不眠と生活習慣や疾病罹患との関係の研究、生活習慣病の加療状況と食事との関連の研究、調剤薬局へのアクセスと服薬アドヒアランスの研究、医薬品の市販後安全対策への臨床データの活用などを計画しています。

スタッフ
特定教授
田中 佐智子
特定助教
水野 佳世子
特定助教
深澤 俊貴
共同研究先
  • エーザイ株式会社
  • 協和キリン株式会社

講座ホームページ

ゲノム医療学講座

ゲノム医療学講座は、2021年3月に、コニカミノルタ株式会社による産学共同講座として開設された新しい講座です。ゲノム医療とは、Precision Medicine (精密化医療、あるいは、個別化医療と訳されます)に繋がる、私たちが持つ遺伝情報(ゲノム)を医療に活用していくものですが、遺伝情報は遺伝性疾患を持つ患者やご家族のためだけのものではありません。お互いの多様性を認め、尊重するためにも、私たち一人ひとりがヒト遺伝を正しく理解して社会を目指して、取り組んでいきます。
ゲノム医療学講座は、医学研究科 社会健康医学系専攻 医療倫理学・遺伝医療学分野(遺伝カウンセラーコース)と連携し、遺伝カウンセラーコース修士課程大学院生の教育に関わりながら、以下のテーマについて取り組んでいきます。

  1. ゲノム医療を適切に広げていくための基盤となる、一般市民の遺伝リテラシー向上に向けての取り組み。
  2. 遺伝カウンセラーを中心とする、ゲノム医療に必要な専門的人材養成に必要なプログラムや教材の開発。
  3. 個別化がん検診サービス「Ambry CARE Program™」の実践と臨床研究
  4. コロナ禍におけるオンライン遺伝カウンセリングのあり方に関する臨床研究
  5. 小児期発症の遺伝性疾患の診断告知に関する臨床研究
  6. エーラース・ダンロス症候群のより良い医療を提供するための臨床研究
  7. 先天異常合併の極低出生体重児の予後に関する研究
  8. 脳クレアチン欠乏症候群に対する臨床研究
  9. ATR-X症候群に対する基礎および臨床研究と,5−アミノレブリン酸による治験への取り組み。
スタッフ
研究代表者(執行責任者)
小杉 眞司
特定教授
       和田 敬仁
特定講師
       川崎 秀徳
特定助教
       鳥嶋 雅子
特定助教
       吉田 晶子
共同研究先
  • コニカミノルタ株式会社

炎症性皮膚疾患創薬講座

炎症性皮膚疾患創薬講座では、マルホ株式会社と共同し、アトピー性皮膚炎をはじめとする様々な炎症性皮膚疾患に対する治療薬のターゲット探索を行います。さらに、得られた開発候補化合物の治療薬としての可能性探索を行います。

スタッフ
特定准教授(皮膚科兼任)
中島 沙恵子
特定助教(皮膚科兼任)
 渋谷 真美
共同研究先
  • マルホ株式会社

がん組織応答共同研究講座

がんは国内において年間100万人が罹患し、死亡原因の1位を占める疾患です。昨今の医療技術の進歩、特にPD-L1/PD-1等の免疫チェック分子に対する抗体薬の開発により、がんは治らない病から治る病へと変わりつつあります。しかし、依然、平均5年生存率は6割前後であり、年間37万人が亡くなるなど、人類の健康にとって大きな脅威であり続けています。
がん組織応答共同研究講座は2011年に開始されたDSKプロジェクトのあとを引き継ぐ形で開始された産学共同講座で、住友ファーマ(元・大日本住友製薬)と共にがん組織に浸潤するストローマ細胞に焦点を当て、新しい観点からがん免疫応答に関わる分子メカニズムを解明し、これを基礎に独創的で画期的な抗がん剤や診断・治療法の開発および創出を目指します。

スタッフ
特定教授
服部 雅一
特定講師
粟屋 智就
特定助教
徐 彦
共同研究先
  • 住友ファーマ株式会社

健康医療AI講座

従来の疾患リスク評価は年数回程度の検診結果や診察の結果から、疾患リスク評価を実施しています。そのため、日々の生活環境における生体の変化を考慮した疾患リスクの評価・モニタリングができていません。健康医療AI講座では、ゼロイベントを目指して活動するオムロンヘルスケア株式会社との共同研究により、個別の生活習慣、日々過程で計測されるバイタルサインのデータ等から、日々の疾患リスクの上昇/下降をより高精度に評価したいと考えています。共同研究先が活用可能な医療情報および院外の医療・健康機器の時系列データを用い、統計・機械学習による解析の実施およびその支援を行います。院外の医療・健康機器の時系列データを用いることで、日々の生活習慣の変化も加味した新しい疾患リスク指標の創出を目指します。

スタッフ
特定准教授 峰晴 陽平
特定助教  糀谷 泰彦

共同研究先
  • オムロンヘルスケア株式会社

難病創薬産学共同研究講座

当講座では、皮膚疾患を中心に、あるいは特定の臓器ではなく疾患に共通する分子機構(フェロトーシス、異常スプライシング、GPCRシグナリング等)を中心に、難病・希少疾患の治療をめざして、産学共同で最先端の研究をおこないます。

なぜ皮膚なのか

本講座で皮膚を対象とすることには理由があります。皮膚は全身を包む一つの臓器です。皮膚疾患は感染症、自己免疫病、アレルギー性疾患、薬疹、腫瘍など、実に多彩です。皮膚は誰の目にも見え、誰でも直接触ることができます。したがって皮膚科学は医学の元祖と言えるのではないでしょうか。例えば、ヒポクラテスは、がんを皮膚に張り付いた蟹にたとえました。ローマ時代に活躍したスエトニウスは、初代ローマ皇帝アウグスツスのアトピー性皮膚炎を記述しています。大国主命は、全身がただれたうさぎを介抱したと言われています。近代以降も、梅毒、サルコイドーシス、SLEなどの領域で皮膚科領域が多大な貢献をしています。このような歴史的遺産を引き継ぐのが現代皮膚科学です。臓器に直接アクセスできる強みは、現代の皮膚科学でも同じです。皮膚生検、テープストリッピングによる角層採取、人工水疱など、安全に病変細胞を採取し、最先端の解析技術を日々応用しています。新薬の導入や、既存薬の再評価においても、外用薬という薬物送達手段をもつ皮膚科は有利です。さらに京大皮膚科は、太藤病をはじめ、独創的な疾患概念を世界に発信しつづける自由闊達な組織です。

なぜ免疫なのか

皮膚は200億個の記憶T細胞で武装されており、皮膚そのものが免疫臓器です。免疫系は、神経系、内分泌系、消化器系とも相互作用する開かれたシステムでもあります。感染症、アレルギー、自己免疫病にとどまらず、がんにも関係します。本講座では、皮膚免疫をより所としてさまざまな全身性疾患の治療までもめざします。

なぜ難病なのか

難病には希少疾患が多く含まれます。希少疾患の創薬研究は、解析材料の確保、新薬の安全性評価、投資の回収が困難であり、研究を推進する上での難しさがあります。しかし難病を、一般的疾患の特殊例と捉えれば、見方が変わります。難病の原因を解明することで、新たな概念が創出され、新規創薬標的が同定されれば、難病だけでなく、一般的な疾患への応用も可能です。

分子機構に介入する創薬とはなにか
  1. フェロトーシスとの関連が知られている疾患は多岐にわたっており、神経変性疾患、線維症、虚血再灌流障害、がん、のような難病が含まれます。新規に同定したフェロトーシス阻害化合物を用いて難病治療をめざします。
  2. 遺伝性疾患の35%は、異常スプライシングが原因であると推測されています(Kassie S Manning & Thomas A Cooper, Nat Rev Mol Cell Biol. 2017)。開発中のスプライシング制御化合物を用いて、遺伝性疾患の治療をめざします。3. GPCRのシグナリング調節が疾患治療につながることは、神経系疾患や循環器系疾患で示されています。GPCRアゴニスト、アンタゴニストを新規に同定・解析した経験を生かして、アンメット・メディカル・ニーズに対する治療法を提案します。
この講座でめざすもの

皮膚病変を構成する表皮細胞、免疫細胞、線維芽細胞の遺伝子発現を解析します。その結果をもとに、新たな治療標的を探索し、ドラッグリポジショニングも検討します。またフェロトーシス、異常スプライシング、GPCRシグナリング等、疾患の病態に重要な意義を有するが、まだ有効な薬剤が開発されていない分子機構に作用する小分子化合物を新たに見出すことで、有効な治療法のない難病に対する画期的な創薬の実現を目指します。皮膚科の強みと豊富な創薬経験を生かして積極的に臨床試験を進めていきます。京都大学の強みを生かし、異分野との交流を通して新たな疾患概念を提唱していきます。

スタッフ
特定准教授
野村 尚史
特定講師
 豊本 雅靖
共同研究先
  • 鳥居薬品株式会社
  • 株式会社BTB創薬研究センター

がん個別化医療開発講座

現在がん治療においては、科学的根拠に基づいた各種ガイドラインに沿って手術療法、放射線療法、化学療法などが施されています。新薬の登場により化学療法の選択肢は年々増えていますが、薬効を治療開始前に予測することは難しいのが現状です。そのため、顕著な効果が認められなければ別の薬剤に変えるといった対応を取らざるを得ず、患者さんの身体的・経済的負担が大きくなっています。こうした状況から、個々のがんの特徴にあったより効果的な治療を的確に実施できる「個別化医療」の実現が求められています。
がん個別化医療開発講座では、患者さんの腫瘍組織から樹立した細胞を用いて体外で高精度に治療効果を予測する革新的ながん個別化医療システムの開発を目的としています。高度な医学研究の知見を持つ京都大学と、多様なイメージング技術を持つ株式会社SCREENホールディングス、マイクロ流路と電極を用いた細胞ソーティング技術を持つ株式会社AFIテクノロジー、患者さんから採取した細胞を体内に近い状態で培養(スフェロイド培養)する技術を持つ京ダイアグノスティクス株式会社の技術やノウハウを融合して実証実験を実施し、治療効果予測システムの完成を目指します。
がんの新たな個別化医療の早期実用化を目指すとともに、さまざまながん治療への展開を推進し、社会課題の解決に貢献していきます。

治療効果の見える化で、わたし専用のがん治療を

スタッフ
教授
   小濵 和貴
特定准教授
竹村 幸敏
特定助教
 前川 久継
共同研究先
  • 株式会社SCREENホールディングス
  • 株式会社AFIテクノロジー
  • 京ダイアグノスティクス株式会社

がん免疫PDT研究講座

本産学共同講座では、免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん免疫療法の治療成績を向上させるために、局所治療効果の高い光線力学的療法を用いた新たながん免疫複合療法の開発を目指します。また、本講座では、ニボルマブに代表される免疫チェックポイント阻害薬(Immune Checkpoint Inhibitor:ICI)を用いたがん免疫療法の治療成績を向上させる新たながん複合免疫療法の開発を目的とします。具体的には、ICIに局所治療効果の高い光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)を組み合わることにより遠達効果を誘導し、がん免疫療法の効果増強の可能性を検討します。ICI・PDTの併用による複合がん免疫療法の効果発現メカニズムを明らかにするとともに、至適治療条件を確立し、医師主導治験にてその効果と安全性を検証します。

スタッフ
特定教授
 茶本 健司
特定准教授 堅田 親利
特定講師
 谷口 智憲
特定助教
 玉置 将司
共同研究先
  • Meiji Seikaファルマ株式会社



http://iopdt.med.kyoto-u.ac.jp

次世代臨床ゲノム医療講座

マルチオミクス解析による治療判断、予後予測に有用ながんの新規分類の作成と分子標的の探索及び同定された分子を標的とした創薬を目的としています。血液腫瘍、消化器腫瘍を中心とした同一患者由来腫瘍検体に対して、全ゲノムシーケンス、RNAシーケンス、エピジェネティックシーケンスを実施し、腫瘍の進展、治療抵抗性の分子基盤を解明し、詳細な臨床データとともに新規分類を作成し、さらに新規治療標的を明らかにします。同定された新規分子標的についてin vitro、及びin vivo解析を実施し、将来的な臨床応用を目的とした創薬を実施します。

スタッフ
特定准教授
中川 正宏
共同研究先
  • 公益社団法人鹿児島共済会 南風病院

大規模医学AI講座

診断情報、ゲノム情報、論文等のヘルスケア分野での多種多様なデータを分析し、治療方法や創薬等に関連する新知見発見や予測を行うための、高精度かつ信頼性の高いAI技術を研究します。そして、ヘルスケア分野でのデータを使った知識発見や予測問題に対して、最新のAI理論に基づく新技術を開発導入することで、不完全・不正確・不十分なデータを含む情報の網羅的な組み合わせによる性能改善や、説明可能性、解釈可能性、安定性等を備えた信頼性のあるAIを実現します。
現在使われているデータ分析技術に対して、Transformer、Wide Learning 等の性能・信頼性の高い最新の機械学習モデルへの置換、転移学習、半教師付き学習等の使用可能データを拡大する技術の組み込み、シミュレータ等を使ったデータ作成と補間技術の導入を行います。また、これらの技術をヘルスケア分野のワークフローに取り入れるための応用課題を解決します。

スタッフ
特定准教授
松本 篤幸
特定助教  原田 陽平

共同研究先
  • 富士通株式会社

食と健康科学研究講座

食と健康科学研究講座では、「食を通して人々の健康に貢献する」ことを念頭におき、これまで医療、創薬で利用されてきたシミュレーション技術やビックデータ解析などの最先端技術を“食”に応用することで、美味しさと健康を両立する新たな「食の科学」の開拓を目指しています。
具体的には、①味覚や嗅覚などの感覚受容体の機能解析、②高度な分析機器を用いた標的分子の構造解析、③小腸や肝臓などにおける栄養吸収・代謝解析、④ゲノムから代謝産物までの網羅的なオミクス解析などの4つの高度な解析技術を活用して、食事に対する満足感が得られ、さらに健康機能を維持できるような食品素材の探索を実施します。
特に③および④については、「ヒト腸管モデル」としてヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞もしくは腸管オルガノイドを用いて、様々な栄養素やその類縁物質さらには探索により見出した素材などの影響をマルチオミクス解析(ゲノミクス・プロテオミクス・メタボロミクス)で可視化することにより、上記成分の腸管での機能(吸収・代謝・排泄さらには免疫機能など)を明らかにします。
以上の得られた知見から、最終的には食材の組み合わせや摂取の仕方を工夫することにより、より美味しく満足感があり、かつ食材の健康に関わる機能を最大限に活用した食品のデザインを実現します。

スタッフ
特任教授
 益田 勝吉
特定准教授
荒木 望嗣
特定准教授
岩田 浩明
特定助教  稲葉 明彦

共同研究先
  • 株式会社ゼンショーホールディングス

生体環境応答学講座

明治ホールディングス株式会社との連携プロジェクトである「生体環境の応答性に関する研究プロジェクト」(プロジェクト総括: 柳田素子教授)は、腸内細菌叢を主軸として、腸・腎臓・脳など各臓器への影響や加齢性変化を解明し、関連疾患の予防と治療に資することを目指します。また、全ライフコースを俯瞰した脳の加齢性変化のメカニズムを細胞生物学的な視点から明らかにすることを目指します。

スタッフ
特定教授
川内 健史
特定助教 山田 龍

共同研究先
  • 明治ホールディングス株式会社