ポリシー社会健康医学系専攻

理念と目標

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京都大学大学院医学研究科は、医学を、生命科学と理工学を基盤とし個および集団としての 人の健康と疾病を取り扱う統合的な学問と位置づけ、生命現象の根本原理、病気の成因、病態 の機構を解明し、その成果を先進的医療と疾病予防に発展させる国際的研究拠点を形成する。

これにより、専門領域での深い学識に加え基礎生物学から臨床医学・社会医学までを見通す広い視野を備えた医学研究者の養成を行う。

アドミッションポリシー

専門職学位課程

本専攻専門職学位課程は、将来、保健・医療・福祉分野における専門職あるいは教育研究職につくことを希望する者が、「社会における人間」の健康に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために、高い倫理的責任感を備え、優れた教養の下、必要となる高い専門知識、専門的技術、態度、そして高度な専門的職業人に必要な理論と実務の両面にわたる能力を身につけることを目的としている。勉学の対象となる学問分野は、自然科学から人文科学にわたっていることから、あらゆる分野の出身者で、国内外の保健・医療・福祉分野で高度専門職業人あるいは教育研究者としての活躍をめざす意欲あふれる者、そして専門職に必要な要件を積極的かつ自律的に獲得する意思のある者を求める。
入学者選抜にあたっては、一般選抜及び社会人選抜の区分に分けて実施し、いずれにおいても英語や専門科目の筆記試験および口頭試問により、語学力、コミュニケーション能力、専門的な知識と考察力、専門職に向けての意欲、これまでの実績等を総合的に加味し、評価判定する。

なお、本専攻には、次の特別コースが開設されている。

【遺伝カウンセラー(GC)コース】(2年制)

先端医療に対応できる高度な専門的知識とコミュニケーション能力を持ち、患者・家族・被験者の立場を理解して新医療とのインターフェースとなりうる人材を総合的に養成する。新しい分野に挑戦したい意欲のある者を求める。

【臨床統計家育成(CB)コース】(2年制)

本コースは、高い倫理性、科学的客観性をもった臨床統計家(臨床試験に関わる統計専門職)の育成を目的としている。本コースでは、データサイエンスや統計学に関心のある者を、医学知識の有無を問わず受け入れている。なお大学院入学に最低限必要な統計学の素養として、統計検定2級程度の能力が必要となる。(統計検定2級の資格を持つことが入学の条件ではない。)

【臨床研究者養成(MCR)コース】(1年制)

本コースは、医師・歯科医師を対象とした1年制のコースである。これまでわが国の医学研究は、主に生命科学研究に重点をおいてきたが、同時にヒトや集団を単位とした臨床研究を推進する必要がある。MCRは、この領域で活躍する研究者を育成するためのわが国で初めての本格的な教育課程である。自らの臨床経験に根ざしたリサーチ・クエスチョンにもとづいた臨床研究を志す者を求める。

【知的財産経営学プログラム】(2年制)

経済競争力強化と人類の健康向上のため、革新的医薬品などの医療イノベーションの創出が望まれている。そのためには、大学等の基礎・臨床研究から生まれる研究成果を知的財産として保護し、産業界で成果を最大限活用することができる知的財産マネージャー及びアントレプレナーが必要であり、この分野で活躍したい意欲あふれる者を求める。

【1年制MPHコース】(1年制)

本コースは、公衆衛生の実務経験を有する者を対象とした1年制の専門職学位課程である。我が国では現場での公衆衛生実務経験を体系的に理論化し、さらに高度な専門性を身につける教育課程は十分に整備されてこなかった。自らの実務経験を基に、さらに高度な専門性を身につけたい者を対象とし、従来の枠にとらわれず、幅広い公衆衛生実務経験を経て高度な専門性を獲得する。
例えば、これまでに行政機関(保健福祉医療関係、産業保健機関あるいは環境保健機関)、健保組合等の保険者、病院・診療所等の医療機関、介護老人施設、医薬品産業、医療関連産業、環境関連産業その他医療福祉関係団体(NPO・NGO)、企業における環境保健部門や産業保健部門、医療制度や病院経営に関わるシンクタンク、マスコミなど報道機関、法曹分野で実務経験を有する者があげられる。保健福祉医療分野の実務経験としては、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師・保健師・管理栄養士などの資格で、行政機関あるいは医療機関における2年以上の勤務経験(原則として常勤(週32時間以上))等が挙げられる。本コースは2年制MPHと併願することができるが、臨床研究者養成(MCR)コースとの併願はできない。

博士後期課程

本専攻博士後期課程は、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために必要な基盤となる学識および専門的知識、技術、態度および高い倫理性と強固な責任感を備え、保健・医療・福祉分野での高度な学術研究を自立して実施できる人材を養成することを目的としており、課程修了者には、将来、国内外の保健・医療・福祉分野における高度な教育・研究に携わることを期待している。研究対象となる学問分野は、自然科学から人文社会科学にわたり広範な学際性を有することから、あらゆる分野の出身者で、上記目的を遂行しうる意欲にあふれる者、そして必要要件を積極的かつ自律的に獲得する意思のある者を求める。
入学者選抜にあたっては、一般選抜及び社会人選抜の区分に分けて実施し、いずれにおいても英語や専門科目の筆記試験および口頭試問により、国内外に発信できる語学力、高いコミュニケーション能力、学術の高度化に寄与する意欲、研究課題を自ら設定できること、これまでの実績等を総合的に加味し、評価判定する。

カリキュラムポリシー

専門職学位課程

本専攻専門職学位課程は、「社会における人間」の健康に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために必要な知識、技術、態度および高い倫理的責任感を備えた、保健・医療・福祉分野における専門職につく多様な人材を養成することを目的として、基礎、応用、実践からなる系統的な教育を行い、ディプロマ・ポリシーに掲げる目標を達成するために、以下の方針でカリキュラムを作成している。(なお、カリキュラム・ポリシーで示す教育課程の体系性や構造については、シラバスの全体説明部分を参照)
具体的には、「基礎教育」では、社会健康医学分野のあらゆる専門家に必要な、コア領域(疫学、医療統計学、環境科学、行政・管理、社会科学)の教育を行い、非医療系出身者には、加えて、医学の基本知識を養うために、基礎医学、臨床医学の概論的教育を行う。これらの基礎教育以外に、さらに「応用教育」として、先端医科学から人文社会科学にわたる多様な選択科目を用意し、応用性、学際性の高い教育を提供することにより、高い素養を備えた専門家を養成する。「実践教育」では、課題研究を全員に課し、研究の企画・倫理審査・実施・発表を経験する中で、知識を統合的に理解させるとともに、専門家に必要な企画力、プレゼンテーション能力、および職業的倫理の理解を涵養する。
学修の成果は、各種講義・実習等への参加姿勢、定期試験の成績、課題研究の発表内容等で評価する。各科目内容の詳細や学修成果の評価方法については、シラバスにおいて科目ごとに明示している。
こうした系統的な教育を行う一方で、社会健康医学分野において、特に専門性の高い分野の専門家を養成するために、以下の特別コースを開設し、その養成に努める。

【遺伝カウンセラー(GC)コース】(2年制)

認定遺伝カウンセラー制度委員会の認定する遺伝カウンセラー養成課程の要件を満たす遺伝医学・遺伝カウンセリングの専門科目として、演習、実習を多く盛り込んだカリキュラムとなっており、かつ社会健康医学系専攻の必修のコア科目も履修し、パブリックヘルス及び研究手法にも習熟させる。

【臨床統計家育成(CB)コース】(2年制)

本コースは、臨床統計家の人材供給を求める日本の臨床研究現場からの強いニーズにより設置された2年制の専門職学位課程である。コース修了後は、臨床統計家育成コースを修了したことを証明する修了証とともに社会健康医学修士(専門職)が授与される。本コースでは、臨床統計家に必要な知識、技術、態度を2年間で体系的に学習できるよう、臨床統計関連科目だけではなく、医学、疫学、研究倫理などから全体のカリキュラムが構成されている。これに加えて、臨床試験を実施している京都大学医学部附属病院・国立循環器病研究センターと連携し、on the job trainingによる臨床研究に関する実地研修を提供する。この実務経験を通じて、計画立案、データマネジメント、解析等、臨床統計学の実践的な技術を学ぶことができる。また、本コース推奨科目以外にも社会健康医学系専攻が提供する多くの科目を履修することができる。

【臨床研究者養成(MCR)コース】(1年制)

臨床研究者養成コースは、臨床経験を有する医師・歯科医師を対象としたコースである。
本コースの教育プログラムの特徴は、集中的な講義・実習にある。1年間で所定の単位を取得出来るように組まれており、社会健康医学系専攻との共通科目のみならず、MCRコース生のみが受講できるMCR限定科目も用意されている。
また、個別指導(メンタリング)を重視しており、学生の個々の研究課題に適した担当教官(メンター)を決定し、研究プロトコールの作成、既存データの解析、研究計画実施上の指導を行う。必要に応じて複数の異なる領域の専門家がメンターとなることもある。
修了時には、課題研究発表会での発表・試問の機会を設ける。一方的な座学のみに終始することなく、修了時に自らの1年間の成果を発表し、試問を受けることで、将来的に臨床研究を独力、あるいは研究協力者と協働して行う人材を養成する。

【知的財産経営学プログラム】(2年制)

本プログラムは、大学等の研究成果を知的財産として保護し、産業界で成果を最大限活用できる、医療イノベーションに資する知的財産マネージャー及びアントレプレナーを養成する。本プログラムのカリキュラムは、①医学、②法律、③ビジネスの3分野から構成されている。医学については、コア領域に加えて、医学研究科で提供されている講義を履修する。法律に関しては、特許法を中心とした知的財産法の基礎と実務に関する講義を履修する。ビジネスに関しては、アントレプレナーシップ、契約、医療関連ビジネスに関する講義を履修する。課題研究では、適宜インターンシップを取り入れて、バイオ、医療分野における技術経営、知的財産マネジメントに関する研究を行う。本プログラムの教育は、最新且つ実践に即した内容を提供するため、京都大学で産学連携の実務を担当している教員や、現役の弁理士の他、製薬企業等から外部講師を招き実施されている。

また、博士後期課程への進学を前提とした以下のコースを置く。

【MPH-DrPHコース】(1年制)

1) 修士相当の学位を有する者、あるいは2) 医師・歯科医師の内2年以上の臨床経験あるいは卒後研修を修了した者で、専門職学位課程に引き続き本専攻博士後期課程に進学を希望し、入学試験および専門職学位課程入学後の成績も優秀であり、意欲と能力のある者は、審査を受け、本専攻博士後期課程の受験資格を認定された場合、専門職学位課程の修了要件を満たし、博士後期課程入学試験に合格することにより、1年次修了時点で博士後期課程に進学できる。(本コースはあくまでも博士後期課程への進学を前提としたものであり、進学しない場合は専門職学位課程の1年次修了は無効となる。)

博士後期課程

本専攻博士後期課程は、「社会における人間」の健康に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために必要な知識、技術、態度および高い倫理性と強固な責任感を備え、保健・医療・福祉分野での高度な学術研究を自立して実施できる人材を養成するために、以下の方針でカリキュラムを作成している。(なお、カリキュラム・ポリシーで示す教育課程の体系性や構造については、シラバスの全体説明部分を参照)
本学専門職学位課程を卒業した学生には、同課程で修得した知識・技術を基盤に、それぞれの目指す専門分野に必要とされる、より高度な知識・技術を教育し、国際的に通用する研究者を育成する。本学専門職学位課程卒業ではない学生に対しては、専門職学位課程のコア領域(疫学、医療統計学、環境科学、行政・管理、社会科学)の修学を課し、また、非医療系出身者には、さらに、基礎医学、臨床医学の概論的教育を課すことにより、格差のない人材育成を図る。
学修の成果は、各種講義・実習等への参加姿勢、定期試験の成績、論文審査の内容等で評価する。

ディプロマポリシー

専門職学位課程

社会健康医学系専攻の専門職学位課程では、原則2年以上在学し、かつ分野科目(課題研究を含む)で30単位以上修得することが学位授与の必要要件である。ただし、各特別コース・プログラムにおいては必須科目が別途定められている。課題研究については、配属された研究室で行い、研究のアイデアとそれに対応する研究のプロトコールの作成、データの収集と解析、結果の考察とを経験し、プレゼンテーションによる最終審査に合格することが求められる。
修了にあっては、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決する知識、技術、態度を有する高い素養を身につけるとともに、先端的課題の解決に取り組む総合的な能力および高い責任感、倫理性を備え、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 社会健康医学に関わる実務・政策・調査・教育において、専門的かつ指導的役割を果たすことができる。
  2. 人々の健康に関わる経済・環境・行動・社会的要因について知識を深め、新しい知識と技術を生み出すことができる。
  3. 生み出した新しい知識と技術を健康・医療に関わる社会の実践、方策と政策に還元できる。
  4. 社会健康医学に関わる優れた教養や各専門の知識と技術をもって、個人・組織・地域・国・世界レベルで貢献できる。

また特別コース・プログラムの特徴として、それぞれ以下の点に到達していることを目安とする。

【遺伝カウンセラー(GC)コース】(2年制)

先端医療に対応できる高度な専門的知識とコミュニケーション能力を持ち、患者・家族の立場を理解して遺伝医療におけるインターフェースとなる能力を身につける。

【臨床統計家育成(CB)コース】(2年制)

①臨床研究の科学的な質を保つために必要な統計学基礎および臨床統計学を修めること。特に「臨床試験のための統計的原則(ICH E9ガイドライン)」について 十分に理解すること。②病院での臨床研究に関する実地研修を通じて、統計解析、データマネジメント等の実務を経験し、臨床統計家に求められる技術に習熟すること。③臨床研究の倫理的な質を保つために必要な知識・態度を身につけること。特に日本計量生物学会作成の「統計家の行動基準」について十分に理解すること。

【臨床研究者養成(MCR)コース】(1年制)

臨床研究を支える基本理論・知識・実践技術に習熟し、医療者としてのリサーチ・クエスチョンを解決するために、研究プロトコールの作成、研究の実施・マネジメント、データの解析、解釈、論文化を独力でできる(あるいは、適切な時期に専門家に適切な相談・照合ができる)。

【知的財産経営学プログラム】(2年制)

生命科学分野における知的財産経営、技術経営に関する問題解決能力、実践・実務能力および高度な専門性を身につける。

博士後期課程

社会健康医学系専攻の博士後期課程では、3年以上在学して研究指導を受け、所定の単位を修得することが、求められる。所定の単位とは、本専攻専門職学位課程修了者以外の場合には、医療系出身は13単位、医療系以外の出身は19単位、そして本専攻専門職学位課程修了者は6単位である。さらに査読のある国際的学術誌に筆頭著者として公表した原著論文についての学位審査に合格することが、学位授与の必要要件である。
修了にあっては、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために必要な学術課題を考究する素養を身につけることが基本となる。また、研究課題を自ら設定でき、高度な学術研究を自立して実施できるとともに、先端的課題の解決に取り組む総合的な能力および高い責任感、倫理性を備え、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 社会健康医学に関わる実務・政策・調査・研究・教育において、高度に専門的かつ指導的役割を果たすことができる。
  2. 人々の健康に関わる経済・環境・行動・社会的要因について高度な知識を深め、新しい知識と技術を生み出すことができる。
  3. 生み出した新しい知識と技術を健康・医療に関わる現実社会の高度な実践方策と高度な政策に還元できる。
  4. 社会健康医学に関わる各専門の高度な知識と技術をもって、個人・組織・地域・国・世界レベルで貢献できる。