呼吸器形成研究医学・医科学専攻

客員教授 森本 充

呼吸器の発生、再生研究を通して、生命の根幹的な現象に迫ります。ヒトを含む陸生動物が行う外呼吸は、呼吸器の枝分かれた気管支、小嚢構造に分化細胞が適切に配置されることによっての生理機能を発揮します。これらの複雑な組織構造は胚発生中に構築され、幹細胞が密接に関わっています。発生中の幹細胞と成体の組織幹細胞には共通点と相違点を併せ持ちます。私たちは特に発生後期〜新生児期における呼吸器の成熟過程と、成体での組織損傷からの再生現象を題材に、生涯を通じて保存された発生・再生過程の分子機構を研究しています。

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研究・教育について

呼吸器は複雑な組織構造を持ち、一度壊れたら再生しない臓器と考えられてきました。しかし長年の研究により、組織幹細胞による傷害の修復・再生機構が存在することがわかってきました。再生に貢献する幹細胞の制御分子は発生の制御分子とよく似ていることもわかってきましたが、なぜ発生と再生に共通点が多いのか?疾患にも関わっているのか?その疑問の答えはまだわかっていません。
研究室ではマウス遺伝学、ヒト多能性幹細胞を使って、1)胎児期―新生児期の呼吸器形成原理の解明、2)幹細胞による成体の損傷再生機構の解明、3)呼吸器疾患のモデル化、4)呼吸器組織を再建する研究を行っています。これらの研究のためにマウス発生工学、オルガノイド培養、高解像度ライブイメージング、ES/iPS細胞からの分化誘導といった手法を使います。大学院生は、研究テーマは本人の興味と研究室の方向性を考慮して相談して決めます。実験技術の習得だけではなく、基礎発生学の理解、論文読解のコツ、学術プレゼンテーション技術の向上を目指した指導を行います。

図1 マウス胎児肺の気管支3次元構造。組織を透明化し、気管支上皮を画像化。構造を赤線、分岐を白点で示している。

図2 肺胞オルガノイド。生体肺組織から採取した組織幹細胞を3次元培養することで肺胞オルガノイドが作れる。I型肺胞上皮細胞(赤)II型肺胞上皮細胞(緑)。

研究業績

  1. Kiyokawa H, Yamaoka A, Matsuoka C, Tokuhara T, Abe T, Morimoto M*. Airway basal stem cells reutilize the embryonic proliferation regulator, Tgfβ-Id2 axis, for tissue regeneration. Developmental Cell 56, 1917-1929 (2021).
  2. Kishimoto K, Furukawa KT, Luz-Madrigal A, Yamaoka A, Matsuoka C, Habu M, Alev C, Zorn AM, Morimoto M*. Bidirectional Wnt signaling between endoderm and mesoderm confers tracheal identity in mouse and human cells. Nature Communications vol. 11, Article number: 4159 (2020).
  3. Kishimoto K, Tamura M, Nishita M, Minami Y, Yamaoka A, Abe T, Shigeta M, Morimoto M*. Synchronized mesenchymal cell polarization and differentiation shape the formation of the murine trachea and esophagus. Nature Communications vol. 9, Article number: 2816 (2018).
  4. Tsao P*, Matsuoka C, Wei SC, Sato A, Sato S, Chena HK, Ling TY, Mori M, Cardoso WV, Morimoto M*. Epithelial Notch signaling regulates lung alveolar morphogenesis and airway epithelial integrity. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 113, 8242-7 (2016)
  5.  Noguchi M, Sumiyama K, Morimoto M*. Directed migration of pulmonary neuroendocrine cells toward airway branches organizes the stereotypic location of neuroepithelial bodies. Cell Reports 13, 2679–86 (2015)

研究室

[客員教授] 森本 充

〒606-8501

京都市左京区吉田近衛町

Tel: 075-753-4332

e-mail: mitsuru.morimoto@riken.jp(理研)

e-mail: secretary@anat2.med.kyoto-u.ac.jp(機能微細形態学研究室秘書)

URL: https://lungdev.riken.jp/

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