教授 松田 文彦
ゲノムに書き込まれた情報を用いた病気の解析は、ポストゲノムプロジェクトの中でも、最も重要な課題の一つです。
とくに、複数の遺伝子に環境要因が加わって発症する生活習慣病(多因子型遺伝病)の克服のためには、ゲノム上の変異を用いた遺伝解析が必須です。当研究室では、疾患を免疫系疾患と一部の癌に限定して、候補となる遺伝子群の一塩基多型(SNP)を同定し、多数の患者と健常者の検体を用いて疫学的規模の遺伝子のタイピング(genotyping)を行います。バイオインフォーマティクス,統計遺伝学の手法を用いてSNPと臨床情報を統合したデータベースの統計解析を行い、SNPに基づく遺伝学が臨床研究に直結した次世代の遺伝学として有効であることを実証します。
研究・教育について
- 多因子型遺伝病の多人種にわたる遺伝解析を、フランス国立ジェノタイピングセンターとの国際共同研究で、多数の患者と健常者対象群のDNA検体を用いて疫学的規模(千人規模の検体)の解析を行います。研究の対象となる疾患を、免疫系の異常、例えばリウマチ、SLE、バセドー病等の自己免疫疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)と、癌などのDNA修復機構が関係する疾患に限定して、免疫関連遺伝子の一塩基多型(SNP)を見つけ、患者と健康な人の間での多型のパターンの比較を日本人と白人で行い、病気と関連する多型、人種に特異的な多型を同定します。そして将来的にこういった病気の予知、診断、およびテーラーメイド医療と呼ばれる、患者個人の体質に応じた最善の治療法を確立できる為の、基礎的情報のデータベース化を行います。
- 遺伝子とその多型に関する情報(公開データと新たに得られたデータ)を各疾患の患者の臨床情報と併せ、一元管理が可能な疾患別SNPデータベースの構築を行います。これにはバイオインフォーマティクスに関する高い能力と豊富な経験が必要とされるので、フランス国立ジェノタイピングセンターの協力の下で行います。
- 遺伝解析によって得られるデータの解釈に必要な統計遺伝学のプログラムの構築、それを用いた統計解析を行います。この分野では、米国ロックフェラー大学との共同研究を既に始めており、教官や学生の交流を積極的に進めながら最新の理論生物学の日本への導入と、これを使いこなせる日本人の若手の人材の育成を試みます。また、開発された統計手法の有効性の評価や問題点の洗い直しを、本研究での解析結果をモデルケースとして試みることで、分子疫学研究の次世代の標準手法となり得る、より洗練された統計理論の構築を目指します。
研究室
教授:松田 文彦