准教授 坂本 龍太
「フィールド医学」は疾病、老化のありさまを、自然環境、文化背景との関連でもう一度、捉えなおそうとする研究領域である。患者さんはどんな家族や仲間がいて、どういう場に暮らし、何を食べ、どのような課題を抱えているのか。目の前の一人の患者が抱える病の原因や予防・治療の方策を考えていくとその背景には様々な要素があり、医学の枠にとどまっていては解決がおぼつかないことが多い。現地で人々の苦に寄り添いながら、内に湧いてきた問いを重んじ、その問いを追究していく。生活の場に根ざした一人一人の健康を追求していきたい。
研究・教育について
本研究分野では、異なる自然生態系、歴史、文化、 社会的背景のもとでの健康のとらえ方、 疾病発現状況、生活状況などについて、フィールドワークを重視しながら研究を行っている。我々はこれまでに、高知県土佐町における高齢者健診を柱とする健康長寿計画、中国の青海省やインドのラダーク及びアルナーチャルなど高地環境における老いの研究、ブータンにおける地域高齢者医療計画、路上水たまりに棲むレジオネラ属菌の研究、インドネシアのパプア州イア川流域に頻発する神経変性疾患研究、インドネシアの西ヌサ・トゥンガラ州における小規模金採掘に伴う水銀汚染の健康被害調査などの課題を扱ってきた。ブータン東部タシガン県において、地域住民、ブータン王立大学シェラブツェ校、県役場、保健省などと協働で、地域医療の底上げ、持続可能な農業、文化保全を柱とする草の根事業も進めている。気候変動による生活への影響が顕在化している今、我々にとって真に健康な生き方とは何かが切実な問題として問われているのではないか。我々の教室では、一人一人が持つ使命感、興味関心、問いなどを尊重し、それを追求するお手伝いをし、互いに学び合うことができればと考えている。
研究業績
- Sakamoto R, et al. Legionella pneumophila in rainwater on roads. Emerging Infectious Diseases 2009; 15: 1295-1297.
- Sakamoto R, et al. Subjective quality of life in older community-dwelling adults in the Kingdom of Bhutan and Japan. Journal of the American Geriatrics Society 2011; 59: 2157-2159.
- 坂本龍太. 『ブータンの小さな診療所』ナカニシヤ出版、2014年12月11日.
- Sakamoto R. Legionnaire’s disease, weather and climate. Bulletin of the World Health Organization 2015; 93: 435-436.
- Sakamoto R, et al. Sleep quality among elderly high-altitude dwellers in Ladakh. Psychiatry Research 2017; 249: 51-57.
研究室
准教授:坂本龍太
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名誉教授:松林公蔵
連携教授:奥宮清人
連携准教授:藤澤道子
連携准教授:和田泰三
連携助教:広崎真弓