免疫細胞生物学医学・医科学専攻

教授 上野 英樹

―ヒト免疫学―
免疫系は生体を病原体から防御するために必須な機構です。しかし免疫系は厳格な制御を必要とし、この正常な免疫応答機構が破綻することにより、多くの疾患をもたらします。また、慢性感染症、がんなどの疾患は免疫機構を乗っ取って変異させ、疾患の慢性化を促進します。本研究室は、ヒト免疫学を専門的に行っています。ヒト健常人における免疫応答の制御機構の同定、さらに疾患患者における免疫反応の異常、破綻の機構を明らかにすることにより、疾患の病態の解明、及び新たな治療戦略の開発を目的に研究を行っています。

研究室Webサイト

研究・教育について

マウスモデルを用いた研究は免疫学の発展に大きく貢献しました。一方で、マウスでの知見のヒトへの応用での限界や、マウスとヒトでの免疫制御機構の違いが広く認識されるようになりました。すなわち、ヒトでの免疫応答の理解にはヒト検体を用いたヒト免疫学が非常に重要です。
ヒト免疫学は解析機器、手法の進歩と共に、この5-10年間で研究手法が飛躍的に進化しました。シングルセルレベルでの解析が日常的になり、従来のヒト血液検体を用いた研究に加えて、炎症組織、がん組織など、少量の組織検体でも詳細な解析が可能となり、より直接的に病態に関与する免疫応答の解明ができるようになりました。本研究室では、state-of-the-artの手法を用いた最新のヒト免疫学を展開しています。健常人や患者から得られる様々な検体を用いて、「正常」なヒト免疫制御機構の解明、及びヒト疾患における免疫応答の「異常」、さらにその破綻機構の解明を目的とした研究を行います。対象疾患は、令和5年現在、感染症、ワクチン、がん免疫、自己免疫疾患、アレルギー、炎症性神経疾患です。ヒト臓器では特に肝臓に注目した研究を行っています。

5-laser Cytek Aurora FCMおよび10X Genomics 5’ scRNAseqを用いた新型コロナ感染症回復患者での新型コロナウイルス スパイク蛋白特異的CD4+ T細胞サブセットの多様性の解析、および感冒コロナウイルス スパイク蛋白特異的CD4+ T細胞とのTCRクローン重複の解析データを示す。

Fluidigm Hyperionを用いたヒト慢性炎症肝臓切片の超多色免疫染色解析データの一例を示す。

研究業績

  1. M. Yasutomi, A. F. Christiaansen, N. Imai, N. Martin-Orozco, C. V. Forst, G. Chen, H. Ueno. CD226 and TIGIT Cooperate in the Differentiation and Maturation of Human Tfh Cells. Front Immunol 13, 840457 (2022).
  2. S. Horiuchi, H. Wu, W. C. Liu, N. Schmitt, J. Provot, Y. Liu, S. E. Bentebibel, R. A. Albrecht, M. Schotsaert, C. V. Forst, B. Zhang, H. Ueno. Tox2 is required for the maintenance of GC TFH cells and the generation of memory TFH cells. Science Advances 7, eabj1249 (2021).
  3. H. Yoshitomi, H. Ueno. Shared and distinct roles of T peripheral helper and T follicular helper cells in human diseases. Cell Mol Immunol 18, 523-527 (2021).
  4. B. Boisson, Y*. Honda, M*. Ajiro, J. Bustamante, M. Bendavid, A. R. Gennery, Y. Kawasaki, J. Ichishima, M. Osawa, H. Nihira, T. Shiba, T. Tanaka, M. Chrabieh, B. Bigio, H. Hur, Y. Itan, Y. Liang, S. Okada, K. Izawa, R. Nishikomori, O. Ohara, T. Heike, L. Abel, A. Puel, M. K. Saito, J. L. Casanova, M. Hagiwara, T. Yasumi. Rescue of recurrent deep intronic mutation underlying cell type-dependent quantitative NEMO deficiency. J Clin Invest 129, 583-597 (2019).
  5. H. Yoshitomi, S. Kobayashi, A. Miyagawa-Hayashino, A. Okahata, K. Doi, K. Nishitani, K. Murata, H. Ito, T. Tsuruyama, H. Haga, S. Matsuda, J. Toguchida. Human Sox4 facilitates the development of CXCL13-producing helper T cells in inflammatory environments. Nat Commun 9, 3762 (2018).

研究室

教授: 上野 英樹
准教授: 吉富 啓之
特定助教: 本田 吉孝
特定助教: 濱谷 美緒
助教: 藤岡 秀成
助教: 藤岡 麻友

TEL: 075-753-4658
FAX: 075-753-4403
E-Mail:​ ueno.hideki.8e@kyoto-u.ac.jp
URL: https://immunol.med.kyoto-u.ac.jp/

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