准教授 徳野 治
研究の概要
1.食品由来の機能性成分やエクソソームによる多剤耐性グラム陰性菌(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌など)の制御発酵食品や食用植物由来の抽出画分から、既存の抗菌薬との相乗効果をもつ機能性成分を探索しています。
2.自然環境における薬剤耐性菌/耐性遺伝子(ARBG)の拡散状況に関する研究
河川や湖におけるARBGの検出調査や、水圏生態系におけるARBGの生物濃縮、細胞外膜小胞(OMV)を介した耐性遺伝子水平伝播に関して、野外試料採取から全ゲノム解析まで一貫して行っています。
研究・教育について
薬剤(抗菌薬)耐性菌の発生や拡散は世界的にも深刻な問題となっています。ほとんどの抗菌薬に耐性を獲得した多剤耐性菌による重篤な感染症の場合は命に関わることもありえます。
当研究室では、抗菌薬と相乗効果のある機能性成分を身近な食品から探索しています。最近になって、ある発酵食品から有効なフラクションを見出しつつあります。相乗効果をもつ有効成分が同定できれば、これまで無効となっていた抗菌薬が再び使用可能となり、多剤耐性菌感染症の治療に大きく貢献できることを期待しています。
耐性菌や耐性遺伝子の自然環境への拡散は近年、新たな環境問題として深刻な問題となりつつあります。当研究室では実際にフィールドへ出向いて試料を採取し、そこに含まれる耐性菌や耐性遺伝子を探索しています。従来の手法と併せて、次世代シーケンシングによる全ゲノム解析なども行っています。
当研究室では、毎週行う論文抄読会と月1回程度のプログレスリポートにより、当該分野に関する幅広い知識をもち、またプレゼンテーション能力の向上を目指します。在学中の学会発表はほぼ必須としています。
研究発表・論文
- 水圏環境における薬剤耐性遺伝子水平伝播機構の解析. 日本薬学会生物系薬学部会主催 第35回微生物シンポジウム 2023年9月
- NDM-1産生多剤耐性グラム陰性菌に対する植物発酵食品由来画分とカルバペネム系抗菌薬との相乗効果. 第92回日本感染症学会西日本地方会学術集会 2022年11月
- 琵琶湖淀川水系上流域と周辺地域土壌ならびに雨水における抗菌薬耐性菌・耐性遺伝子の検出調査 公益財団法人 琵琶湖・淀川水質保全機構 令和3年度水質保全研究助成報告会 2022年3月
- Sterility testing of stem cell products by broad-range bacterial 16S ribosomal DNA polymerase chain reaction. O Tokuno, Akira Hayakawa, Tomoko Yanai, Takeshi Mori, Kenichiro Ohnuma, Ayumi Tani, Hironobu Minami, Takeshi Sugimoto. Laboratory Medicine 46(1) 34-41, 2015
研究室
准教授:徳野 治
e-mail : tokuno.osamu.5x@kyoto-u.ac.jp