教授 錦織 桃子
悪性リンパ腫は代表的な悪性腫瘍の一つであり、国内でも増加傾向にあります。リンパ球には生理的に多くの表現型や機能的内訳が存在し、悪性リンパ腫の病態にもこれらの起源細胞の性質が深く関与します。そのほか、多彩な遺伝子異常や周囲の非腫瘍細胞との関係性など様々な要素がリンパ腫の分子病態を形作っており、未解明のことが多く残されています。そうした背景に基づき、悪性リンパ腫の周囲の非腫瘍細胞との関係性に着目した分子病態の解明や既存薬の作用点の同定・新規治療応用、新規治療の開発に関わる研究に取り組んでいます。
研究・教育について
悪性リンパ腫は成熟リンパ球の腫瘍であり、起源となる正常対応細胞の表現型や性質を色濃く残しています。一方、腫瘍細胞そのものが免疫細胞であることから、その発症機序や病態には独自の興味深い特徴があり、分子病態を理解することにより、意外なところに治療の標的が見つかることがあります。リンパ腫細胞株やリンパ腫モデルマウスを用いて、こうしたリンパ腫の細胞間の関係性を再現し、リンパ腫細胞の持つ遺伝子異常の役割を明らかにしたり、さらに腫瘍微小環境との関係性に着目した治療開発を目指す研究に、血液内科と共同で取り組んでいます。
研究業績
- Yuan H. et al. The EZH2 inhibitor tazemetostat upregulates the expression of CCL17/TARC in B‐cell lymphoma and enhances T‐cell recruitment. Cancer Sci. 2021;112:4604-16.
- Otsuka Y. et al. EZH2 inhibitors restore epigenetically silenced CD58 expression in B-cell lymphomas. Mol Immunol. 2020;119:35-45.
- Jo. T. et al. LUBAC accelerates B-cell lymphomagenesis by conferring resistance to genotoxic stress on B cells. Blood. 2020;1366:684-97.
- Izumi K, et all. Establishment and characterization of a MALT lymphoma cell line carrying an API2-MALT1 translocation. Genes Chromosomes Cancer 2020;59(9):517-24.
- Arima H, et al. B cells with aberrant activation of Notch1 signaling promote Treg and Th2 cell–dominant T-cell responses via IL-33. Blood Adv. 2018:2: 2282–2295.
研究室
教授:錦織 桃子(医学博士) Momoko Nishikori, MD, Ph.D.
E-mail:nishikor@kuhp.kyoto-u.ac.jp
URL:https://hematol.kuhp.kyoto-u.ac.jp/research/lymphoma.html