発生生物学医学・医科学専攻

教授 柊 卓志

生命とは何か? 生命と非生命の違いは? 生命は、ばらつきを内包しながら、どのように強固な機能システムを作るか? 生命システムは、どのように遺伝子から個体に至る多階層の空間・時間情報を統合するか?
これらの問いに近づくため、私たちは、哺乳類胚初期発生モデルを使って、ゆらぎ、調節能、自己組織化のメカニズム・原理の解明に取り組んでいます。そのために、発生学、遺伝学、分子細胞生物学に、工学、物理学、数学を取り入れ、顕微鏡やコンピュータ解析も開発しながら、新しい問題を定義し、創造的に取り組むことを目指します。

研究室Webサイト

研究・教育について

哺乳類の卵には極性がなく、胚の対称性は最初に数回分裂する間に自律的に破られます。その間、細胞系譜や遺伝子発現には確率論的なばらつきがあり、にもかかわらず、どのように哺乳類初期胚が一定の形、大きさ、パターン、機能を持った胚に発生するかは、根源的な問題です。私たちは、学際的手法を取り入れ、胚は、遺伝子、細胞の極性や形、張力、組織の大きさや圧力を統合するフィードバック制御により、ゆらぎを持ちながらロバストネスを獲得する、という原理を提唱しました。さらに、これまで未知だった子宮着床期の研究を行う実験系を開発し、哺乳類発生における胚と子宮の相互作用の重要性を明らかにしつつあります。

哺乳類初期胚を用いて、様々な局面で、生命システムが時間・空間の多階層をまたぐシグナル伝達、協調をしながら自己組織化するしくみを定量的に理解します。

独自の新しい問題を設定し、その解明のために、物理学、数学、工学の背景の人たちと研究室内外で共同研究しながら、あらゆる必要な技術を開発、導入します。長年ヨーロッパで研究室を主宰し、次世代の研究者を育てた経験を基に、創造的なサイエンスを形作ることを目指し、国際基準で教育します。

着床して子宮組織と相互作用するマウス胚

機械学習を使った着床期マウス胚の細胞動態解析

研究業績

  1. Bondarenko, V., Nikolaev, M., Kromm, D., Belousov, R., Wolny, A., Blotenburg, M., Zeller, P., Rezakhani, S., Hugger, J., Uhlmann, V., Hufnagel, L., Kreshuk, A., Ellenberg, J., van Oudenaarden, A., Erzberger, A., Lutolf, M. P. and Hiiragi, T. Embryo-uterine interaction coordinates mouse embryogenesis during implantation. The EMBO journal (2023) 42(17), e113280.
  2. Ichikawa, T., Zhang, H. T., Panavaite, L., Erzberger, A., Fabrèges, D., Snajder, R., Wolny, A., Korotkevich, E., Tsuchida-Straeten, N., Hufnagel, L., Kreshuk, A. and Hiiragi, T. A robust ex vivo system to study cellular dynamics underlying mouse peri-implantation development. Developmental Cell (2022) 57, 373-386.e9.
  3. Chan, C.J., Costanzo, M., Ruiz-Herrero, T., Mönke, G., Ryan, P., Bergert, M., Diz-Muñoz, A., Mahadevan, L. and Hiiragi, T. Hydraulic control of mammalian embryo size and cell fate. Nature (2019) 571(7763), 112-116.
  4. Korotkevich, E., Niwayama, R., Courtois, A., Friese, S., Berger, N., Buchholz, F. and Hiiragi, T. The apical domain is required and sufficient for the first lineage segregation in the mouse embryo. Developmental Cell (2017) 40(3), 235–247.e7.
  5. Maître, J.-L., Turlier, H., Illukkumbura, R., Eismann, B., Niwayama, R., Nedelec, F. and Hiiragi, T. Asymmetric division of contractile domains couples cell positioning and fate specification. Nature (2016) 536, 344–348.

研究室

[教授] 柊 卓志
[助教]市川 尚文

TEL: 075-753-9895
e-mail: hiiragi.takashi.7w@kyoto-u.ac.jp
URL: https://ashbi.kyoto-u.ac.jp/lab-sites/hiiragi/

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