がん・幹細胞シグナル医学・医科学専攻

教授 伊藤 貴浩

私たちの研究室では、幹細胞の運命制御のしくみを明らかにすることを目標にしています。
幹細胞は、多分化能を保持しながら増殖できる「自己複製能」を持つ特殊な細胞で、多細胞生物の成体においては常に新しい前駆・成熟細胞を供給することで組織恒常性の維持に寄与しています。一方、がん組織にも自己複製能と分化能が異なる複数種のがん細胞が存在し、正常組織に類似した階層性を持つことが明らかになってきました。私たちは、これらの幹細胞の研究を通じて細胞運命の制御機構の理解とその応用を目指しています。

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研究・教育について

細胞分裂によって生じた新たな2つの細胞は同一あるいは異なる細胞運命を辿ることができますが、多分化能をもつ幹細胞の分裂においては、幹細胞を増やすかあるいは特定の細胞系譜へと分化するかを決定づけるとても重要なプロセスです。この「細胞運命制御」を支える分子機構の理解は、組織形成や損傷からの修復・再生の解明や、組織制御技術の開発につながる可能性があります。また、腫瘍組織中に存在し自己複製能を持つ「がん幹細胞」は、治療抵抗性、病期進行、さらに転移や再発に関与するので有効な治療標的になります。すなわち、幹細胞運命を制御するしくみの理解は、健康長寿とがんの生物学の双方の分野において重要であり、私たちは代謝と遺伝子発現制御機構を切り口として、造血と骨格筋組織における幹細胞システムの作動原理の解明に取り組んでいます。

(1) 正常及び腫瘍組織における幹細胞システム

研究業績

  1. Hattori A, Tsunoda M, Konuma T, Kobayashi M, Nagy T, Glushka J, Tayyari F, McSkimming D, Kannan N, Tojo A, Edison A, Ito T. (2017) Cancer progression by reprogrammed BCAA metabolism in myeloid leukemia. Nature 545:500-504.
  2. Hattori A, Buac K, Ito T. (2016) Regulation of stem cell self-renewal and oncogenesis by RNA-binding proteins. Adv Exp Med Biol 907:153-88.
  3. Zimdahl B*, Ito T*, Blevins A, Bajaj J, Konuma T, Weeks J, Koechlein CS, Kwon HY, Arami O, Rizzieri D, Broome HE, Chuah C, Oehler VG, Sasik R, Hardiman G, Reya T. (2014) Lis1 regulates asymmetric division in hematopoietic stem cells and in leukemia. Nat Genet 46:245-52.
  4. Ito T, Zimdahl B, Reya T. (2012) aSIRTing control over cancer stem cells. Cancer Cell 21:140-2.
  5. Ito T, Kwon HY, Zimdahl B, Congdon KL, Blum J, Lento WE, Zhao C, Lagoo A, Gerrard G, Foroni L, Goldman J, Goh H, Kim SH, Kim DW, Chuah C, Oehler VG, Radich JP, Jordan CT, Reya T. (2010) Regulation of myeloid leukaemia by the cell fate determinant Musashi. Nature 466:765-8.

研究室

教授  伊藤 貴浩
准教授 服部鮎奈
助教  松浦顕教
助教  沖川沙佑美

e-mail: itolab(at)infront.kyoto-u.ac.jp

URL: https://cellfate.infront.kyoto-u.ac.jp/

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