免疫制御医学・医科学専攻

教授 生田 宏一

免疫系は、宿主と病原微生物の激しい生存競争によって進化した結果、我々の想像をはるかにこえた巧妙な制御機構をそなえています。サイトカインはこの免疫系をコントロールする重要な分子の一つです。私たちの研究室では、このサイトカインによる免疫系の生成と免疫応答の制御機構を明らかにすることを目差しています。免疫学に興味をもち、新しいことに挑戦する意欲のある若い方の参加を大いに歓迎します。

研究室Webサイト

研究・教育について

私たちの研究室では、サイトカインの中でも特にリンパ球の分化と維持に重要な働きをしているインターロイキン7(IL-7)とIL-7レセプター(IL-7R)を主な対象として、以下のような研究を進めています。

  1. 免疫系細胞におけるIL-7Rの分化シグナル

    IL-7Rがリンパ球抗原受容体の遺伝子組換えを誘導し、T細胞の活性化や機能抑制を促進するメカニズムを、エピジェネティクスや代謝調節の観点から明らかにします。

  2. IL-7Rの発現の制御機構とその機能

    IL-7Rの発現は厳密に制御されており、免疫系細胞の分化や免疫応答をコントロールしています。ステロイドホルモンがIL-7R遺伝子のエンハンサーに結合して、その発現とT細胞の体内動態や機能を制御するという研究から、免疫系と内分泌系のクロストークや免疫機能の概日リズムを解明します(図1A)。

  3. IL-7およびIL-15産生細胞の可視化と局所機能

    IL-7とIL-15は近縁のサイトカインであり、ストローマ細胞が産生します。IL-7とIL-15の産生細胞を蛍光タンパク質にて可視化し、局所における機能を解析することで、サイトカインを産生する微小環境の実態を明らかにします(図1B)。
    大学院教育では、これらの研究に参加することで分子生物学・免疫学の知識と技術を身につけてもらい、みずから研究を企画・遂行・発表する能力を修得するように指導しています。

図1. グルココルチコイドによるT細胞機能の亢進
マウスでは夜間にグルココルチコイドの濃度が高くなることで、T細胞でのIL-7RとCXCR4の発現が高くなり、T細胞のリンパ組織へのホーミングと免疫応答能が亢進する。

図2. IL-15-CFPノックインマウスのリンパ節におけるIL-15 (CFP)発現細胞の検出
T細胞領域 (T)、髄質 (M)、血管でIL-15発現細胞が見られる。

研究業績

  1. Cui G, Shimba A, Ogawa T, Jin J, Miyachi H, Abe S, Tani-ichi S, Dijkstra JM, Kryukov K, Asahi T, Takami D, Zhu Y, Hara T, Kitano S, Xu Y, Miyata K, Kanaya T, Minato N, Imanishi T, Oike Y, Ohno H, Ohteki T, Kubo M, Holländer GA, Shiroguchi K, and Ikuta K. (2022) A circulating subset of iNKT cells mediates antitumor and antiviral immunity. Sci Immunol, 7: eabj8760, 2022.
  2. Cui G, Shimba A, Ma G, Takahara K, Tani-ichi S, Zhu Y, Asahi T, Abe A, Miyachi H, Kitano S, Hara T, Yasunaga J, Suwanai H, Yamada H, Matsuoka M, Ueki K, Yoshikai Y, and Ikuta K. (2020) IL-7R-dependent phosphatidylinositol 3-kinase competes with STAT5 signal to modulate T cell development and homeostasis. J Immunol, 204:844-857.
  3. Shimba A, Cui G, Tani-ichi S, Ogawa M, Abe S, Okazaki F, Kitano S, Miyachi H, Yamada H, Hara T, Yoshikai Y, Nagasawa T, Schütz G, and Ikuta K. (2018) Glucocorticoids drive diurnal oscillations in T cell distribution and responses by inducing interleukin-7 receptor and CXCR4. Immunity, 48:286-298.
  4. Cui G, Hara T, Simmons S, Wagatsuma K, Abe A, Miyachi H, Kitano S, Ishii M, Tani-ichi S, and Ikuta K. (2014) Characterization of the interleukin-15 niche in primary and secondary lymphoid organs in vivo. Proc Natl Acad Sci USA, 111:1915-1920.
  5. Tani-ichi S, Shimba A, Wagatsuma K, Miyachi H, Kitano S, Imai K, Hara T, and Ikuta K. (2013) The interleukin-7 receptor controls development and maturation of late stages of thymocyte subpopulations. Proc Natl Acad Sci USA, 110:612-617.

研究室

教授 生田 宏一

TEL 075-751-4012
FAX 075-751-4810
e-mail:ikuta.koichi.6c@kyoto-u.ac.jp
URL:https://www2.infront.kyoto-u.ac.jp/Ikuta-Lab/

  1. ホーム
  2. 研究
  3. 研究分野一覧