教授 朝長 啓造
すべてのウイルスは感染した細胞の仕組みを巧みに利用することで、複製と増殖を繰り返しています。したがって、ウイルスと細胞との相互作用を知ることは、ウイルスの病原性や宿主への適応戦略のみならず、宿主側の防御反応を明らかにすることにつながります。私たちの研究室では、ウイルス性疾患の克服を目指して、ウイルス生物のつながりの本質を明らかにする研究を目指しています。また、ウイルスの特性を活かした遺伝子治療用の新規ウイルスベクターの開発も行っています。
研究・教育について
本研究分野では、RNAを遺伝情報に持つRNAウイルスの病原性と複製機構の解明を目標に研究を進めています。現在の主な研究対象はボルナウイルスと新型コロナウイルスです。ボルナウイルス研究では、病原性や感染・複製機構などのウイルス学的な探究に加えて、生物ゲノムに内在化しているボルナウイルス由来配列(内在性ボルナウイルス)の機能や進化の謎を探る共進化研究、そしてボルナウイルスの特性を活かして樹立した全く新しい遺伝子細胞治療用ウイルスベクターREVecの開発研究を行っています。新型コロナウイルス研究では、変異株の解析とウイルス複製と相互作用する宿主因子の解析です。本研究室は医生物学研究所に所属しており、医学研究科および生命科学研究科からの大学院生を受け入れて教育に当たっています。大学院生には研究室のテーマの中から独自の研究プロジェクトを与え、スタッフの指導により独立した研究者として活躍できるよう指導を行っています。
研究業績
- Kojima S, Yoshikawa K, Ito J, Nakagawa S, Parrish NF, Horie M, Kawano S, Tomonaga K. Virus-like insertions with sequence signatures similar to those of endogenous non-retroviral RNA viruses in the human genome. Proc Natl Acad Sci USA 118(5):e2010758118. (2021)
- Parrish NF and Tomonaga K. A viral (Arc)hive for metazoan memory. Cell 172(1-2):8-10 (2018)
- Fujino K, Horie M, Honda T, Merriman DK and Tomonaga K. Inhibition of Borna disease virus replication by an endogenous bornavirus-like element in the ground squirrel genome. Proc Natl Acad Sci USA 111:13175-13180 (2014).
- Matsumoto Y, Hayashi Y, Omori H, Honda T, Daito T, Horie M, Ikuta K, Fujino K, Nakamura S, Schneider U, Chase J, Yoshimori T, Schwemmle M and Tomonaga K. Bornavirus closely associates and segregates with host chromosomes to ensure persistent intranuclear infection. Cell Host Microbe 11:492-503 (2012)
- Horie M, Honda T, Suzuki Y, Kobayashi Y, Daito T, Oshida T, Ikuta K, Jern P, Gojobori T, Coffin JM and Tomonaga K. Endogenous non-retroviral RNA virus elements in mammalian genomes. Nature 463:84-87 (2010)
研究室
教授:朝長啓造
准教授:牧野晶子
助教:神田雄大
助教:松郷宙倫
FAX 075-751-4000
e-mail: tomonaga@infront.kyoto-u.ac.jp
URL:https://t.rnavirus.virus.kyoto-u.ac.jp/