教授 花川 隆
磁気共鳴画像(MRI)を始めとする非侵襲脳構造・機能計測の進歩は目覚ましく、ヒトの脳の正常な電気・化学的情報伝達網の状態と精神・神経疾患に伴う異常を様々な角度から明らかにしています。しかし、非侵襲脳構造・機能計測から得られる知識と、伝統ある神経解剖学・神経病理学的知識の間には埋めるべきギャップがあります。当分野は、脳内の情報伝達網の構造と機能を、微視から巨視レベルまで統合的に可視化する技術と、脳活動に対する神経工学的介入技術の開発を通じ、精神・神経疾患を克服するための知識ネットワークを構築していきます。
研究・教育について
ヒト中枢神経の情報処理は、数百兆個とも言われるシナプスが形成する情報伝達網により行われます。このように複雑なシステムから発現する機能の原理の解明には、細胞レベルの微視的構造や機能の理解と同時に、複雑さゆえに生まれるシステム特性の巨視的な理解が必要です。当分野は、脳の機能と構造を、微視的レベルから巨視的レベルまで、シームレスに計測する技術の開発を目指します。
ヒトを対象とした多モーダル脳構造・活動計測研究では、空間定位能に優れたMRIを中核技術として用い、運動、感覚、認知、情動など脳のモジュール機能とその統合メカニズムの理解を目指すとともに、神経疾患への治療応用を見据え、時間分解能に優れた脳波(EEG)に機械学習技術を応用した神経工学的介入技術の開発を推進します(図1)。
ヒトの脳構造MRI研究は、学習により脳灰白質容積が増加するなどの神経科学的に未知の巨視的神経可塑性の存在を明らかにしました。しかし、巨視的神経可塑性の背景となる神経生物学的メカニズムは不明です(図2)。この謎の解明のため、MRI信号を細胞・組織の情報で説明するための技術開発を推進し、技術を病理検査や解剖教育にも活用したいです。
研究業績
- Hosoda C, Tsujimoto S, Tatekawa M, Honda M, Osu R, Hanakawa T: Plastic frontal pole cortex structure related to individual persistence for goal achievement. Commun Biol.
- Uehara K, Furuya S, Kita K, Numazawa H, Sakamoto T, Hanakawa T: Distinct roles of brain activity and somatotopic representation in pathophysiology of focal dystonia. Hum Brain Mapp 2019.
- Hori Y, Ihara N, Sugai C, Ogura J, Honda M, Kato K, Isomura Y, Hanakawa T: Ventral striatum links motivational and motor networks during operant-conditioned movement in rats. Neuroimage 2019.
- Hanakawa T, Goldfine AM, Hallett M: A common function of basal ganglia-cortical circuits subserving speed in both motor and cognitive domains. eNeuro 2017.
- Kasahara K, DaSalla CS, Honda M, Hanakawa T: Neuroanatomical correlates of brain-computer interface performance. Neuroimage 2015.
研究室
教授 花川隆
准教授 梅田達也
助教 吉永健二、森圭史、 東口大樹
特定助教 山口健治
(電話; 075-753-4432, E-mail; hanakawa-office(at)mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
・研究室ホームページへのURL:https://www.brainteg.med.kyoto-u.ac.jp/