細胞機能制御学医学・医科学専攻

教授 岩井 一宏

がん、神経変性疾患などの今後人類が克服すべき疾患も、私たちの身体を構成する細胞の機能異常によって引き起こされます。私たちの研究室では、細胞内の素過程に着目しながら高次生命現象や疾患に迫る研究を進めています。具体的には、ユビキチン修飾系、ユビキチン研究から派生してきたNF-κBの活性化、細胞死制御機構と鉄代謝調節とその破綻によって生じる鉄依存的な細胞死であるフェロトーシスに着目しつつ、基礎研究を推進するとともに、炎症性疾患、がんの病因解明、治療法の開発を目指した研究を推進しています。

研究室Webサイト

研究・教育について

大きく分けて二つのテーマの研究を進めています。一つ目は私たちが同定した新規タンパク質修飾、直鎖状ユビキチン鎖を合成するLUBAC複合体の研究です。私たちは、直鎖状ユビキチン鎖が転写因子であるNF-kBを活性させ、プログラム細胞死を抑制すること、同ユビキチン鎖の生成亢進や抑制が、がんや免疫疾患の原因となることも示して来ました。それらを踏まえ、現在は直鎖状ユビキチン鎖のがん、免疫疾患の発症、病態形成における役割の詳細な解析を進めています。二つ目は鉄代謝の研究です。鉄は鉄イオンとしてあるいはヘムなどの形でタンパク質と結合して酸素運搬、ATP産生などに関わりますが、毒性も発揮します。とりわけ近年は、鉄が惹起する細胞死であるフェロトーシスががん、虚血性疾患との関連から注目を集めています。私たちは老化や疾患との関連も視野に入れつつ、十分解析が進んでいない鉄によるフェロトーシスの惹起機構の研究を進めています。
本研究室は医学部の生理学の教育を、医学研究科では大学院生の教育、研究指導を担っています。色々な学部の出身者が、それぞれ独自のテーマを持ち指導教官と日々議論を交わしながら研究を進めています。

研究メンバー

研究業績

  1. Fujita, H., Tanaka, Y.-K., Ogata, S., Suzuki, N., Kuno, S., Barayeu, U., Akaike, T., Ogra, Y., and Iwai, K. PRDX6 augments selenium utilization to limit iron toxicity and ferroptosis. Nat. Struct. Mol. Biol. 31(8):1277-1285, 2024. doi: 10.1038/s41594-024-01329-z.
  2. Takeda, Y., Ueki, M., Matsuhiro, J., Walinda, E., Tanaka, T., Yamada, M., Fujita, H., Takezaki, S., Kobayashi, I., Tamaki, S., Nagata, S., Miyake, N., Matsumoto, N., Osawa, M., Yasumi, T., Heike, T., Ohtake, F., Saito, M. K., Toguchida, J., Takita, J., Ariga, T., and Iwai, K. A de novo dominant-negative OTULIN variant is associated with OTULIN Related Autoinflammatory Syndrome. J. Exp. Med. 221(6):e20231941. doi: 10.1084/jem.20231941.
  3. Fuseya, Y., Kadoba, K., Liu, X., Suetsugu, H., Iwasaki, T., Ohmura, K., Sumida, T., Kochi, Y., Morinobu, A., Terao, C., and Iwai, K. Attenuation of HOIL-1L ligase activity promotes systemic autoimmune disorders by augmenting linear ubiquitin signaling. JCI Insight 9(3):e171108, 2024. doi: 10.1172/jci.insight.171108.
  4. Fuseya, Y., Fujita, H., Kim, M., Ohtake, F., Nishide, A., Sasaki, K., Saeki, Y., Tanaka, K., Takahashi, R. and Iwai, K. The HOIL-1L ligase modulates immune signaling and cell death via mono-ubiquitination of LUBAC Nature Cell Biology 22(6):663-673, 2020. doi: 10.1038/s41556-020-0517-9
  5. Tokunaga, F., Nakagawa, T., Nakahara, M., Saeki, Y., Taniguchi, M., Sataka, S.-I., Tanaka, K., Nakano, H., and Iwai, K. SHARPIN is a component of the NF-kB activating linear ubiquitin chain assembly complex. Nature 471:633-636, 2011. doi: 10.1038/nature09815.

研究室

生体制御医学講座 細胞機能制御学分野
教授:岩井 一宏
講師:簗取 いずみ
特定講師:藤田 宏明
助教:戸田 有亮

e-mail: kiwai@mcp.med.kyoto-u.ac.jp
URL: http://www.mcp-kyoto-u.jp

  1. ホーム
  2. 研究
  3. 研究分野一覧