准教授 森瀬 譲二
糖鎖はタンパク質や脂質の機能を修飾し、細胞に個性を与えます。その構造は複雑で多様であるものの、1つ1つの糖鎖には重要な生命情報が含まれていると考えられます。我々は特定の糖鎖に着目しながらその機能的役割の解明を目指しつつ、さらに多様な糖鎖構造の発現をコンロールするような技術の開発も進めています。他にも糖鎖に関連した興味深いテーマが見つかれば、学生主導的なアイディアで研究を進める環境も提供します。
研究、教育について
現在、以下のテーマを中心に研究を進めています。 1. 腎臓内非硫酸化HNK-1糖鎖の解析 非硫酸化HNK-1糖鎖とは特徴的な3糖構造から構成されており(図1A)、腎臓内で強く発現します。最近の解析で、この糖鎖が腎機能保護的に働くことがわかってきました(図1B)。そこで我々はキャリア分子や発現領域に着目しながら、その分子メカニズムの解析を行っています。さらに本糖鎖は尿中にも検出され、かつ様々な腎機能障害に伴い量的変動を示すこともわかってきました(図1B)。将来的には、腎疾患を評価する糖鎖バイオマーカーへ展開することを目指します。 2. 糖鎖改変技術の開拓 タンパク質上の未成熟型糖鎖はゴルジ体で成熟し、膜表面などに発現します。すなわち、この過程で糖鎖構造が多様化していきます。それに対し最近我々は、未成熟型糖鎖を維持する特定のアミノ酸配列を見つけました(図2A)。さらに重鎖単一ドメイン抗体であるnanobodyと特定の糖転移酵素を融合することで、標的分子選択的に目的糖鎖付加が行える可能性を見出しました(図2B)。このような技術開発を通し、糖鎖発現を自在にコントロールする新たな手法を開拓しています。
研究業績
- Morise J, Yamamoto S, Midorikawa R, Takamiya K, Nonaka M, Takematsu H, Oka S. Distinct cell surface expression patterns of N-glycosylation site mutants of AMPA-type glutamate receptor under the homo-oligomeric expression conditions. Int J Mol Sci, 21, 5101. (2020)
- Morise J, Suzuki KGN, Kitagawa A, Wakazono Y, Takamiya K, Tsunoyama TA, Nemoto YL, Takematsu H, Kusumi A, Oka S. AMPA receptors in the synapse turnover by monomer diffusion. Nat Commun, 10, 5245. (2019)
- *Nakamura A, *Morise J, Yabuno-Nakagawa K, Hashimoto Y, Takematsu H, Oka S. Site-specific HNK-1 epitope on alternatively spliced fibronectin type-III repeats in tenascin-C promotes neurite outgrowth of hippocampal neurons through contactin-1. PLoS One, 14, e0210193 (2019) *These authors contributed equally to this work.
- Morise J, Takematsu H, Oka S. The role of human natural killer-1 (HNK-1) carbohydrate in neuronal plasticity and disease. Biochim Biophys Acta, 1861, 2455-2461. (2017)
- *Takeuchi Y, *Morise J, Morita I, Takematsu H, Oka S. Role of site-specific N-glycans expressed on GluA2 in the regulation of cell surface expression of AMPA-type glutamate receptors. PLoS One, 10, e0135644. (2015) *These authors contributed equally to this work.
研究室
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