教授 野中 元裕
生体を構成する分子には、核酸、タンパク質、糖鎖などがあり、それらの構造や機能は多様性に富んでいます。当研究室では、「多様性には多様性で挑む」という発想で、膨大な数のペプチド配列を含むファージライブラリーを用いて、多様な分子の中から重要なものを効率よく抽出し、機能を制御する方法の開発を目指しています。これまでに、がんや自己免疫疾患を含む難治性疾患のバイオマーカーや、副作用を低減可能な新規抗体モダリティなどの研究を展開しています。本研究の成果は、将来の個別化医療の発展に資するものと考えています。
研究、教育について
これまでに私達は、ファージディスプレイ法と次世代シーケンス技術を組み合わせることで、標的分子に結合するペプチド配列を網羅的に取得するシステムを構築しています。 当研究室では、以下の2つの研究テーマに取り組んでいます。 難治性疾患の新規診断・治療法の開発:がん、アレルギー、自己免疫疾患などの難治性疾患に対する新しい疾患標識・疾患活動性評価マーカーの開発を行っています。また、免疫原性を示さない創薬モダリティとして、鏡像抗体の開発も行っています。 糖鎖機能の制御法の開発:生体構成因子の一種である糖鎖は、ほぼ全ての病気の発症と進展に関与していますが、構造解析や標識体合成が難しいため、生理機能が不明なものが多く残されています。当研究室では、糖鎖模倣ペプチドをスクリーニングし、化学合成して、細胞や個体の外から加えることで、病気に関連する糖鎖の機能を制御する研究を行っています。 日々の研究活動を通じて、科学の最前線に立つ喜びや、それによって得られた成果を元に世の中に貢献する喜びを共有したいと考えています。
ファージディスプレイ法の応用を主軸とした研究プロジェクトの一覧 |
研究業績
- Higashi, K., Oda, S., Fujii, M., Nishida, F., Matsumoto, H., Morise, J., Oka, S., and Nonaka, M. (2023) Construction of a T7 phage random peptide library by combining seamless cloning with in vitro translation. J. Biochem. 175, 85–93
- Aoki, K., Manabe, A., Kimura, H., Katoh, Y., Inuki, S., Ohno, H., Nonaka, M., and Oishi, S. (2023) Mirror-Image Single-Domain Antibody for a Novel Nonimmunogenic Drug Scaffold. Bioconjug. Chem. 34, 2055–2065
- Iwamoto, N., Sato, Y., Manabe, A., Inuki, S., Ohno, H., Nonaka, M., and Oishi, S. (2023) Design and Synthesis of Monobody Variants with Low Immunogenicity. ACS Med. Chem. Lett. 14, 1596–1601
- Nonaka, M., Mabashi-Asazuma, H., Jarvis, D. L., Yamasaki, K., Akama, T. O., Nagaoka, M., Sasai, T., Kimura-Takagi, I., Suwa, Y., Yaegashi, T., Huang, C.-T., Nishizawa-Harada, C., and Fukuda, M. N. (2021) Development of an orally-administrable tumor vasculature-targeting therapeutic using annexin A1-binding D-peptides. PLoS One. 16, e0241157
- Nonaka, M., Suzuki-Anekoji, M., Nakayama, J., Mabashi-Asazuma, H., Jarvis, D. L., Yeh, J.-C., Yamasaki, K., Akama, T. O., Huang, C.-T., Campos, A. R., Nagaoka, M., Sasai, T., Kimura-Takagi, I., Suwa, Y., Yaegashi, T., Shibata, T. K., Sugihara, K., Nishizawa-Harada, C., Fukuda, M., and Fukuda, M. N. (2020) Overcoming the blood-brain barrier by Annexin A1-binding peptide to target brain tumours. Br. J. Cancer. 123, 1633–1643
研究室
教授:野中 元裕
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