木内 泰 准教授が中谷賞奨励賞を受賞しました

受賞

木内 泰 准教授が中谷賞奨励賞を受賞し、平成28年2月26日に贈呈式が行われました。

木内泰准教授の写真

木内准教授は、平成16年に東北大学大学院理学研究科物理学専攻を修了し、理学博士の学位を授与されました。その後、同大学大学院生命科学研究科博士研究員、King’s College London(英国・ロンドン)Postdoctoral Research Associate、東北大学大学院生命科学研究科助教、京都大学大学院医学研究科助教を経て、平成27年2月に京都大学大学院医学研究科准教授に就任し、神経・細胞薬理学分野を担当されています。

中谷賞奨励賞は、医工計測技術分野について独創的な研究をしている将来有望な研究者に贈られるもので、今回木内准教授は「標的に結合解離する蛍光プローブを用いた超解像蛍光顕微鏡法の開発」のテーマで受賞しました。

蛍光顕微鏡は、蛍光抗体や蛍光タンパク質を結合させた標的のタンパク質の細胞内分布の観察を可能にし、現在では生物学・医学の研究分野では欠かせない計測装置となっています。さらに2014年のノーベル化学賞の受賞対象となった超解像蛍光顕微鏡は、従来の蛍光顕微鏡の限界とされていた分解能(~200 nm)よりも一桁小さい分解能でタンパク質の分布を観察することを可能にしました。しかし、分解能がタンパク質のサイズに近づいたため、抗体などによる標識の不均一さが目立つようになり、画像がタンパク質の分布を必ずしも正確に反映しないことが問題とされてきました。さらに多種類のタンパク質を染め分け、同一の細胞で観察することは困難でした。

木内准教授は、既存の手法を超えた高精細な画像が得られ、観察できる標的タンパク質の種類に原理的な上限がない超解像蛍光顕微鏡法IRIS(Image Reconstruction by Integrating exchangeable Single-molecule localization)の開発で中心的な役割を担いました。IRISでは、標的に結合するタンパク質の部分断片を蛍光標識してプローブとして用います。多数のプローブの結合を捕捉することで標的の標識率を上限なく高めることができ、高密度標識による精細な高分解能画像を得ることができます。さらにプローブを洗い流して順次別のプローブと交換することで、連続的に標的タンパク質を標識し、それぞれの高分解能画像を得ることができます。これらの研究成果は、2015年のNature Methods誌の8月号に掲載され、その表紙を飾りました(Kiuchi et al., Nature Methods 12: 743-746, 2015)。 また、この研究成果について日刊工業新聞、京都新聞、朝日新聞でも紹介され、社会的にも注目されています。IRISによる高精細画像と連続多重染色は、多様なタンパク質が複雑に絡み制御される生命現象の解明に強力な手段を提供します。さらにIRISによって観察可能な分子種が今後増えることで、細胞研究や病理診断における免疫組織化学解析が飛躍的に発展することが期待されます。
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