萩原 正敏 教授が京都新聞大賞「文化学術賞」を受賞しました

受賞

萩原 正敏 教授が京都新聞大賞「文化学術賞」を受賞し、平成27年11月26日に贈呈式が行われました。



萩原教授は昭和63年三重大学大学院医学研究科を修了され、医学博士の学位を授与されました。その後、名古屋大学医学部助手、Salk Institute(米・サンディエゴ) Postdoctoral Fellow、名古屋大学医学部講師、助教授、東京医科歯科大学難治疾患研究所教授、同大学大学院疾患生命科学研究部教授を経て、平成22年に京都大学大学院医学研究科教授に就任し、形態形成機構学分野を担当しています。

京都新聞大賞「文化学術賞」は、文化・学術の分野でめざましい業績をあげた者に贈られるもので、今回萩原教授は、RNA制御機構の基礎研究から遺伝病やウイルス感染症に対するアカデミア創薬の道を拓いたことにより、本賞を受賞しました。

従来は、遺伝子の異常に起因する先天性疾患を薬で治すことは到底不可能だと考えられてきましたが、萩原教授は、薬剤で遺伝子発現パターンを変化させることにより遺伝病を治すことは可能ではないかと考え、35年間の長きにわたって独自の研究を展開し、遺伝子発現制御機構の解明を進めてきました。特に、色の異なるGFP蛍光タンパク質を使って、遺伝子発現パターンの変化を生体内で可視化する方法を世界で初めて開発して内外の研究者の注目を集めました。

この画期的なレポーター技術を創薬研究に応用して、遺伝子発現パターンを人為的に操作できる化合物を探索し、家族性自律神経失調症の薬RECTASを見出しました。家族性自律神経失調症は、東欧系のユダヤ人に多い遺伝病で20人に一人が保因者です。萩原教授の発見した薬は、こうした治療法の無い絶望的な遺伝病患者に福音をもたらすことから、ユダヤ人社会を中心に海外で注目を集め臨床開発への準備が始まっています。

また萩原教授はRNAに結合する蛋白質のリン酸化を阻害する化合物TG003を添加することで、遺伝子発現パターンを変化させることが出来ることを見出しました。筋肉が衰える遺伝性の難病であるデュシェンネ型筋ジストロフィー患者の筋芽細胞にTG003を投与することによって、筋肉の維持に必要なジストロフィン蛋白質の発現を回復させることができました。この発見は遺伝病の薬物治療を可能にしたとしてNHKニュースや新聞各紙で報道されました。

遺伝性難病だけでなく、加齢黄斑変性症やウイルス感染症の治療薬候補化合物も見出しています。全く新しいメカニズムで働く抗ウイルス薬FIT039は、京都大学医学部附属病院で、京都大学発の新薬として臨床試験の準備が進んでいます。

以上のようにケミカルバイオロジーの新技術を駆使した画期的な創薬手法は、内外の製薬企業の熱い注目を集めています。萩原教授はこの新しい学問領域の旗手として、日本ケミカルバイオロジー学会 (JSCB)の会長を務めるとともに、2014年の国際ケミカルバイオロジー学会(ICBS)会長に選任されるなど、国際的にも活躍しています。
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