岩井 一宏 教授が日本医師会医学賞を受賞しました

受賞

岩井 一宏 教授が日本医師会医学賞を受賞し、平成27年11月1日に表彰式が行われました。



岩井教授は、平成4年に京都大学大学院医学研究科を修了し、医学博士の学位を授与されました。その後、京都大学医学部附属免疫研究施設助手、米国国立保健研究所(NIH)研究員、京都大学大学院医学研究科助手、助教授、同大学大学院生命科学研究科助教授、大阪市立大学大学院医学研究科教授、大阪大学大学院生命機能研究科・大学院医学系研究科教授を経て、平成24年に京都大学大学院医学研究科教授に就任し、細胞機能制御学分野を担当しています。

日本医師会医学賞は、医学上重要な業績をあげたものに授与されるもので、今回岩井教授は「慢性炎症・癌化に関わる新しいユビキチン修飾系の発見」の研究題目で受賞しました。

タンパク質は私達の身体で色々な役割を果たしていますが、常に機能しているのではありません。多くの場合、別の分子がタンパク質に結合することで、状況に応じてタンパク質の機能が調節されています。岩井教授はタンパク質の機能を調節する新しいタンパク質修飾系である直鎖状ユビキチン鎖とそれを選択的に生成する酵素であるLUBAC ユビキチンリガーゼ複合体を発見しました。

岩井教授はLUBAC ユビキチンリガーゼの活性低下がマウスでは慢性皮膚炎などの多臓器の炎症と免疫不全症状を誘発することを示すとともに、日和見感染症を惹起する真菌であるアスペルギルスはLUBACの機能を抑制することで感染する可能性を示唆しました。ヒトでもLUBACリガーゼの構成タンパク質の変異が免疫不全の原因になることがフランスのグループから報告されています。さらに、岩井教授はLUBAC の活性亢進が、B細胞リンパ腫の発症に関与することを明らかにしました。また、イギリスのグループはLUBAC の亢進が汎用されている抗がん剤であるシスプラチンへの耐性に関与することを報告しています。

このように岩井教授の業績は、がん、炎症性疾患等に苦しんでおられる多くの人たちに福音をもたらす可能性を秘めた壮大なポテンシャルを持つ研究成果であり、すでに、製薬企業で直鎖状ユビキチン鎖生成阻害薬の開発が進められています。
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