本庶佑 医学研究科名誉教授が文化勲章を受章しました。

受賞

Robert-Koch-Preisverleihung 2012


このたび、本庶佑名誉教授が文化勲章を受章した。


本庶佑名誉教授は、昭和41年京都大学医学部を卒業、昭和46年同大学大学院医学研究科博士課程を修了した。米国カーネギー研究所およびNIHにおける博士研究員、東京大学医学部栄養学教室助手、大阪大学医学部遺伝学教室教授を経て、昭和59年に京都大学医学部医科学教室第一講座(のちの大学院医学研究科分子生体統御学講座分子生物学分野)の教授に就任した。在任中は6年間に渡り研究科長としても活躍し、平成17年3月に定年により退職、京都大学名誉教授の称号を受けられた。現在は、引き続き京都大学医学研究科寄附講座免疫ゲノム医学講座の客員教授として研究を継続している。

本庶名誉教授は分子免疫学の分野において、当該研究の幕開けとその後の研究展開に世界で最も先導的な役割を果たし、斯学の発展に多大な貢献をした。


すなわち、生体防御機構である免疫系の中で、最も重要で本質的な現象である獲得免疫における病原体の侵入に反応して起こる抗体の多様化について、その全貌を明らかにした。抗原特異的抗体が作られる過程では、一つの抗原に対して種類の異なる複数の抗体が産生されるクラススイッチと呼ばれる変化と、さらに抗原とよりよく反応するよう、抗体のアミノ酸配列の微調整(体細胞突然変異)が起こる。同名誉教授は、クラススイッチが抗体の主体であるH 鎖のゲノム遺伝子の組み換えと切除によって生じることを発見するとともに、H 鎖抗体遺伝子を単離し解析することによって、同一の遺伝子上に連結して存在するH 鎖抗体遺伝子の各部分が、特殊な反復配列を介した遺伝子組み換えによってクラススイッチがおこる事実を明らかにした。


また、クラススイッチと共に体細胞突然変異も制御するマスター分子であるAID 分子の発見により、多彩な外来抗原に対して生体を防御するに足る多様な抗体を産生できるメカニズムを明らかにした。


加えて、同名誉教授は自ら発見したリンパ球のもつ免疫抑制分子PD-1受容体に対する阻害剤が、癌細胞に対する免疫反応を著しく増強させ、強い抗癌作用を示すことをマウスで明らかにした。近年ヒト臨床治療においてPD-1阻害剤の抗癌作用有効性が高いことが認められ、新しい癌治療薬として期待されている。


今回の文化勲章受章は、これまでの同名誉教授の一連の業績が高く評価されたものである。


親授式は平成25年11月3日に皇居において行われた。

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