茶本 健司 教授(がん免疫総合研究センター がん免疫応答制御部門)が着任しました

お知らせ

 このたび、令和8年2月1日付けで京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター(Center for Cancer Immunotherapy and Immunobiology: CCII)がん免疫応答制御部門 教授を拝命いたしました茶本健司(ちゃもとけんじ)と申します。京都大学医学研究科という、長い歴史と卓越した研究実績を有する場において、新たな研究・教育活動に携わる機会をいただき、大変光栄に存じます。

 私はこれまで約25年にわたり、一貫して腫瘍免疫学の研究に取り組んできました。2006年に北海道大学大学院医学研究科博士課程を修了後、同大学において免疫学の基礎研究に従事し、がんにおける免疫治療の可能性に気づきました。当時、がん免疫治療は現在ほど広く受け入れられておらず、その有効性に懐疑的な見方も少なくありませんでしたが、実験結果が示す事実に基づき、がんが免疫系により認識され制御されうるという確信のもと、基礎研究を継続してまいりました。

 その後、米国ハーバード大学医学部およびカナダ・トロントのPrincess Margaret Cancer Centreにおいて、がんと免疫の相互作用に関する研究に従事し、国際的な研究環境の中で、がん免疫研究の基礎的理解と臨床的意義の双方を深める機会を得ました。

 免疫チェックポイント阻害療法ががん治療として大きな転換点を迎えたのは2014年です。2015年より京都大学大学院医学研究科に助教として着任し、PD-1抗体治療の開発に多大な貢献を果たされた本庶佑先生のもとで、免疫チェックポイント分子を中心としたがん免疫応答機構の研究を進めてきました。この間約8年にわたり、講師、准教授を経験し、研究に対する基本姿勢、広い視野から独創性の高い課題を設定する重要性、学問的本質を追究する姿勢、そして研究室運営方法について、多くのことを学びました。

 免疫チェックポイント分子の研究を通じて、がん免疫応答が単一の分子や経路では説明しきれない高度に複雑な現象であることを強く認識するようになり、他分野を含めた包括的理解の必要性を痛感しました。2023年からは、医学研究科がん免疫PDT研究講座において特定教授として独立した研究室を主宰し、免疫学にとどまらず、代謝、老化、炎症といった関連分野との融合を図りながら、新たながん免疫研究の方向性を模索してきました。今回、CCII内におけるがん免疫応答制御部門において新たな研究室を立ち上げるにあたり、これまでの研究基盤を発展させ、より体系的ながん免疫研究を展開していきたいと考えています。

 免疫チェックポイント阻害療法はがん治療に大きな変革をもたらしましたが、現時点では半数以上の患者において十分な治療効果が得られないことが重要な課題となっています。不応答性の原因は多岐にわたりますが、私たちはその根底の一つとして、免疫細胞の代謝状態が免疫応答の質や持続性を大きく規定している点に注目しています。現在の研究では、免疫代謝という視点から、がん免疫応答の制御機構を再定義することを目指しています。特に、免疫細胞の機能維持や運命決定に深く関与するミトコンドリア機能に着目し、腫瘍微小環境における代謝ストレスや栄養環境の変化が、免疫細胞の活性化、疲弊、さらには治療応答性にどのような影響を及ぼすのかを、分子・細胞レベルで解析しています。

 これらの基礎研究を単なる知的探究にとどめることなく、その成果を患者に還元することを最重要課題と位置づけ、トランスレーショナル研究にも積極的に取り組んでいます。基礎と臨床を往復する研究を通じて、既存の免疫療法の限界を克服する新たな治療戦略の創出に貢献したいと考えています。

 2020年に発足したCCIIは、基礎から臨床までを包含するがん免疫研究の中核的拠点です。今後はCCIIが有する多様な研究資源と人的ネットワークを最大限に活用し、学内外の研究者・臨床医との連携を一層強化することで、がん免疫研究の発展に寄与していきたいと考えています。微力ではありますが、本センターが国際的にも高く評価される研究拠点の一つとして認知されるよう、研究および教育の両面から貢献してまいります。

 教育面においては、医学部生および大学院生が免疫学やがん研究の本質的な面白さと社会的意義を理解できるような教育を心がけ、次世代を担う研究者・臨床医の育成に尽力したいと考えています。自由な発想と挑戦を尊重する研究環境を整え、国際的に活躍できる人材の輩出に貢献することを目標としています。

 今後、京都大学医学研究科の一員として、研究・教育・社会貢献を通じて医学・生命科学の発展に寄与できるよう、誠心誠意取り組んでまいります。何卒ご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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