「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
連合艦隊司令長官であった山本五十六の有名な名言です。まずは自分がやって見せて、しっかりと説明をして理解してもらい、その後、実際に任せてさせてみて、それを認めてあげて褒めて尊重してあげなければ、人は育っていかない。多くの部下を育ててきた彼の言葉は、今や多くの経営者や指導者の格言として知られていますが、医療従事者を育てるのにも通じるものがあります。
リハビリテーション科も、標榜診療科として厚生労働省から認められたのは1996年という比較的新しい科でして、まだまだリハビリテーション科医は少なく、人材を育てるというのが最優先になっています。リハビリテーション科専門医は全国の急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟の数から日本全体で約5000名が必要と試算されていますが、現在の専門医数は約3000名であり、リハビリテーション科専門医が年間100名弱しか増えていかない状況からすると、向こう20年間は、全国のリハビリテーション科専門研修プログラムを構成している大学と医療機関の中で人材育成が最重要な課題になると思います。
リハビリテーションは、病気や怪我により身体機能が低下した患者の社会的回復を支援する分野で、臓器的な機能は低下していても、精神的、社会的な側面にも焦点を当て、全人的なアプローチで患者の回復を支援する診療科です。日本は世界有数の超高齢社会に突入し、健康やQOLの向上に注目が集まり、自立した生活への復帰や健康寿命の延伸を期待され、リハビリテーションに注目が集まってきました。2018年に開始された新専門医制度でも、19の基本領域の一つに設定され、全国の大学にリハビリテーション科が新設されつつあります。
しかし、リハビリテーションは、脳血管障害,運動器疾患,脊髄損傷,神経筋疾患,循環器疾患、呼吸器疾患、内分泌代謝疾患、がん、摂食嚥下障害など,対象疾患も広く、また,急性期、周術期、回復期と生活期までの広いフェーズをカバーしますので、広い知識と手技を身につけることが必要になってきます。
私も、日々、初期研修医と専攻医に接していますが、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」は、現在の医学教育でも人材を育成していくのに当てはまり、教員として私自身の姿勢を問う言葉になっていると思います。
URL:
京都大学医学部附属病院リハビリテーション科
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