松井 茂之 教授(医療統計学分野)が着任しました

お知らせ

 私は、2025年4月1日より社会健康医学系専攻の医療統計学分野に着任しました松井茂之と申します。私は、東京理科大学工学部経営工学科(現在の情報工学科)の出身であり、芳賀俊郎先生、吉村功先生のご指導のもと、博士の学位を取得しました。製薬企業勤務、大分県立看護科学大学助手、専任講師を経て、2002年から本学医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野の准教授(6年間)、2008年から情報・システム研究機構統計数理研究所の准教授・教授(5年間)、2013年から名古屋大学医学系研究科生物統計学分野の教授(12年間)を務めました。そして、この度、17年ぶりに本学医学研究科で再びお世話になることとなりました。30代後半にすごした京都での生活を思い出し、とても感慨深いものを感じております。

 私の出身は工学系ですが、大学院時代からの研究分野は一貫して医療統計学(Biostatistics)です。特に、人を対象とした医学研究の計画とデータ解析に関する統計的方法とその実践について研究して参りました。統計学は実学として、統計理論や数理面の研究(医療統計学の基礎研究に相当)のみならず、その応用としての実践研究、そこからのフィードバックから新たな基礎研究、そしてその実践研究・・・というサイクルを回していくことが重要です。人を対象とした医学研究と一言にいっても、広範な疾患領域の予防から診断、治療の評価を含みますので、医療統計学の研究対象となる医学研究は極めて多様です。大学院時代から30年以上になりますが、医療統計学が取り扱う問題の幅広さ、奥深さにいまだ圧倒され続けています。

 近年特に興味をもって取り組んできたテーマは、診断法と治療法を組み合わせた個別化医療の臨床研究の計画とデータ解析です。伝統的な統計学の枠組みである統計的推測と近年の機械学習・予測解析の発展が交差するテーマです。とりわけ、生物学的な知見に限りがあるもとでのデータ駆動的な診断法開発・バリデーションには多くの固有の統計的課題があります。一方で、研究リソースの限られる実験的研究における適応的実験計画による研究計画の効率化、ベイズモデリングや転移学習による外部情報の活用、これらを考慮した条件付き推測(選択的推論等)といった小規模データを扱うデータ科学の構築にも取り組んでいます。大規模データを扱う観察的研究におけるデータ駆動因果推論や動的治療方針開発などのテーマも含め、幅広いテーマに対して伝統的な統計学と機械学習・AIの融合をはかり、新しいデータ科学の確立に向けて邁進したいと思います。

 人材育成の面では、医学科に代表される医学系学部学生の潜在能力には大いに期待するところですが、データ科学系人材の確保の点では、数学・情報学、経済学などの他学部出身者のリクルートを積極的に試みる必要性があります。こうした幅広いバックグランドをもつ人材を安定的に医学・医療分野に呼び込み、着実に医療データ科学の専門家、研究者として巣立っていけるような人材育成拠点の形成に全力を尽くしたいと思います。

 もちろん、以上の活動の大半は皆様方のお力添え抜きには達成できません。引き続きのますますのご指導ご支援をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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