パンデミック後のASN Kidney Weekは右肩上がりに活性化しているように思われます。最近、腎臓領域の新しい薬剤が続々と発表され、治験中の薬剤も多数あることが業界全体を元気にしているようですが、その背景には数十年の基礎研究の蓄積があることは疑う余地がありません。
ASN Kidney Weekは広大な会場で、大変な数のセッションが平行して開催されるにもかかわらず、会いたい人には会期中に必ず会えるのも不思議です。若かりし頃にposter会場で仲良くなったKatalin SusztakやBen Humphreys、Peter Boorは今や大御所ですが、毎年のASN Kidney Weekで会い、互いの無事と進捗を確かめ合う仲間は、腎臓愛でつながった大きなcommunityのようなものとも言えます。
今回、私は日本腎臓学会のAmbassadorとして発表しましたが、その場で多くの質問やコメントをいただいただけでなく、翌日、翌々日の会場や帰路の空港でも話しかけられ、良いdiscussionをさせていただきました。私にとって、研究の喜びの1つはもちろん新しいことを発見することですが、それを発表することで、聞いてくれた方とつながり、思いもよらない視点からのコメントをもらうことで、さらに研究が発展することも、同じくらい大きな喜びです。
今回当科からは、若手の先生方がOral presentation 2件、Poster presentation 8件を発表してくれましたが、多くのメンバーにとって、初めての国際学会での発表でした。基礎研究を発表してくれた先生方は自分の研究へのpositiveなfeedbackをもらって、自信を深めて帰路についてくれたのがとても嬉しく思いましたし、専攻医の先生方も、緊張しつつもしっかりと発表し、質疑に答えているのを見て頼もしく思いました。これからも若手の先生方には海外でどんどん発表し、それに対するfeedbackを受け止めつつ、良い仲間を作っていってほしいと思っています。(そして、若手の先生方の発表を直前までブラッシュアップしてくださった当科の先生方に心より感謝しています)
もう1点、とても印象的だったのは、Joseph Bonventre先生のHomer W. Smith Award受賞です。Joeは腎臓の修復機構における画期的な研究成果を次々に発表し、領域を確立した方ですが、同時に、世界中から集まるポスドクを育て、独立研究者として巣立たせた素晴らしいメンターでもあります。現在、ASNで中心的な役割を果たしているBen Humphreys、Beni Freedman、森實先生をはじめ、Joeラボの出身者は、Joeの薫陶を受けつつも、独自に新たな領域を開拓し、独立後も成功しておられます。私はJoeラボの出身者ではありませんが、ASN Kidney Weekで発表を聞いていただいて以来、論文へのアドバイスや様々な賞へのご推薦をいただき、育てていただきました。今回、Joeに「素晴らしい研究者を育てる秘訣はなんですか?」と不躾にも聞いてみると、しばらく考えた上で、「良い人を集めて、良い環境を作ると、相互作用が起きて面白い研究が生まれる。それがさらに人を育てるんだ」と教えてくださいました。
研究がなかったら出会わなかった人と、自分の研究成果を通して出会い、仲良くなり、互いに信頼できる仲間になること、そして、その仲間との相互作用を通して、自分が成長することができるのは本当に大きな喜びです。もしこの雑文を読んでくださった若手の先生方がおられましたら、ぜひ継続的に海外での発表の機会をもち、そこで仲間を作っていただきたいと思います。それが(研究人生に限らず)先生方の人生を豊かにし、支えてくれることを確信しています。
URL:
京都大学大学院医学研究科医学専攻腎臓内科学
https://www.kidney-kyoto-u.jp/
写真:Kideny Weekで活躍した当科の専攻医たち