山口 智史 教授(人間健康科学系専攻運動機能解析学分野)が着任しました

お知らせ

 2024年4月1日付けで京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻先端リハビリテーション科学コース先端理学療法学講座の教授に着任した山口智史と申します。

 私の専門領域は、主に中枢神経疾患(脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病等)に対する理学療法学です。これまでの研究は、運動障害(dysmobility)の回復と日常生活能力を最大限に向上させることを目的とし、中枢神経疾患後の新しい理学療法を開発し、その効果と効果機序を検証してきました。

 理学療法学は、リハビリテーション医学に深く関わる学問の1つです。しかし、理学療法学の歴史は100年程度、国内で理学療法士が誕生して約60年と浅く、これから更に発展していく学問です。理学療法学は、さまざまな医学分野を含む応用科学、自然科学、社会科学、形式科学、人文科学など、多くの学問と親和性が高く、また障害を呈した方だけでなく、健康増進、疾病予防、産業などの非常に広い領域で社会に関わっています。

 私は、山形県立保健医療大学の一期生として卒業後、リハビリテーション医学の草分け的存在であった慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターにおいて、理学療法士として臨床活動および研究活動に従事しました。この期間に、木村彰男教授や正門由久教授(東海大)、田辺茂雄教授(現・藤田医科大学)から誘発筋電図による脊髄反射評価や臨床神経生理学の基礎について指導を受けたことで、現在の研究スタイルの基盤を構築することができました。3年間の勤務後に、慶應義塾大学大学院において、リハビリテーション医学教室の里宇明元教授、藤原俊之教授(現・順天堂大学)、長谷公隆教授(現・関西医科大学)より、脊髄相反性抑制、経頭蓋磁気刺激、脳波、表面筋電図についての指導を受けました。また同時に、東京湾岸リハビリテーション病院の臨床部門と研究部門の立ち上げに関わらせていただきました。その期間に、大高洋平教授(現・藤田医科大学)、田中悟志教授(現・浜松医科大学)、大須理英子教授(現・早稲田大学)に、臨床と神経科学の融合的な視点をご教授いただいたことは、自身の理学療法学に対する考えを発展させるうえで重要でした。さらに博士課程では、日本学術振興会の特別研究員DC1に採用され、研究に集中できたことは、研究職を目指すうえで大きな転機でした。また、非侵襲的な脳刺激法の1つであり、世界で最も臨床や研究で使用されているTheta Burst Stimulationの開発者である故・Ying-Zu Huang教授(Chang Gung University, Taiwan)の下で研究させていただいたことで、海外に目を向けるようになりました。

 大学院修了後には、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室の特任助教として、研究活動に従事しました。平成28年9月からは、日本学術振興会の海外特別研究員に採用され、デンマークのUniversity of CopenhagenのJens Bo Nielsen教授の研究室に留学しました。留学中は、脳波-筋電図コヒーレンスや脳幹刺激、経頭蓋磁気刺激と誘発筋電図を併用した評価手技を学びました。これらを応用し、経頭蓋交流電気刺激を使用した中枢神経疾患の新しい歩行リハビリテーション手法の開発の研究に従事しました。

 帰国後は、母校である山形県立保健医療大学保健医療学部の准教授として、理学療法士養成の教育を開始しました。令和2年4月からは、順天堂大学保健医療学部の先任准教授に着任し、同大学リハビリテーシ医学の藤原俊之教授とともに、脳卒中患者の下肢運動機能改善を目的とした、経皮的脊髄電気刺激や末梢神経磁気刺激を利用した新しい治療法について、臨床神経生理学的な効果に関する研究を遂行してきました。

 これまで多くの先生方にご指導を賜り、臨床では多くの患者さんに理学療法を提供する中で理学療法の重要性、課題、可能性、限界を学んできました。これらの臨床、教育、研究の経験と知識を活かして、理学療法士養成校の最高学府である京都大学において、国内外の理学療法学分野における臨床、教育、研究を先導し、社会に貢献できる理学療法士を育成したいと考えています。また、理学療法士という専門的職業の枠にこだわらず、京都大学の自由な学風を活かし、学生が持つ個々の可能性を発展させつつ、社会が抱える多元的な課題の解決に挑戦し、社会に貢献できる人材を育成していきたいと考えています。

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