特色入試入学者(MD研究者育成プログラム学生)学生座談会

独自の選考方法を持つ医学部の特色入試。入学者の皆さんから、特色入試を選んだ理由や試験に向けた準備など、生の声をお聞きします。
また、特色入試入学者が入る「MD研究者育成プログラム」の先輩学生から、研究の醍醐味や卒業後の将来像などをお聞きします。

2023年3月6日掲載

司会

中川 一路教授

特色入試入学者

林 璃菜子2回生

天羽 真嵩3回生

松下 哲也3回生

MD研究者育成プログラム学生

大河内 康之6回生
病態生物医学

日高 礼子6回生
再生免疫学

本日は、お集まりいただき、ありがとうございます。京都大学では特色入試を実施していますが、医学部は、中でも独自性の強い選考方法を用いています。そこで、今回、3名の特色入試入学者の皆さんに来ていただき、特色入試を選んだ理由や試験に向けた準備などについて生の声をお聞きしたいと考えています。
また、特色入試の入学者は、「MD研究者育成プログラム」という、学部生の教育を受けながら基礎医学研究者としてのトレーニングも受けられるプログラムに入ることになっていますので、既に研究室に所属して研究を行っている6回生の先輩2名にも来ていただき、どのような研究を行っているのかなど、お聞きします。

「特色入試」を受験した理由について

まず特色入試入学者のお3方にお聞きしたいのですが、特色入試での受験を決めた理由は何でしょうか。

僕は一般入試をもちろん受ける予定だったので、その勉強もしていたのですが、まずはちょっともう1個枠というかチャンスが増えるというので受けてみようと思ったのと、あと特色入試だと自分が中高で研究とかもやってきたことに対して大学側からどういう評価をもらえるのかというのが気になっていたので、それも受けた理由の一つです。

僕の場合は、松下さんと似ているのですけれど、中学・高校のころからの活動を評価してもらえるという点に興味をひかれて、あとは担任の先生から強く勧められたこともあって受験しました。僕は、中高で活動していたのが科学研究部というところでロボットの大会に出場していました。ロボットプログラミングを趣味としていろいろ活動していたのですけれど、そういった、医学とは直接関係していないところをどう評価されるのかなというのが興味があった点と、あとプログラミングでいうと「inochi学生フォーラム」という活動と「日本学生科学賞」という活動があるのですけど、これらでプログラミングの技術を医療に生かすというような活動をしていまして、それがあって医学部に興味を持ちました。

林さんは、いわゆる「飛び級」で、他の皆さんよりも1年ぐらい早く受験されたのでしたね。

はい、本当にもし合格できるのであれば1年早く勉強できるというのがすごく魅力的だったので、駄目元で出しました。科学オリンピックの日本代表に内定したのが3月の中頃とかそれぐらいだったと思うのですけれど、それで、京大が飛び級をやるらしいと聞いたので、もしかしてと調べたら出願資格があって、どうしようと1カ月ぐらい考えて決めました。

「特色入試」に向けた準備について

特色入試にむけてどのような準備をしたか教えてください。

12月に試験があるので、出願書類は11月の頭ぐらいに出す必要があるのですが、高3に入るぐらいのときにもう受験は決めていたので、夏休みにまとまった時間が取れるので、夏休みぐらいにはその書類を一通り仕上げて、11月の送る前にちゃんと校正をもう一度し直して出願しました。

ロボカップジュニア世界大会に出てとかそういった活動は基本的に趣味として行っていたので、これは特色入試に向けてという意味では考えていませんでした。あと、口頭試問とか筆記試験は、過去問をちらっと見て試験内容を確認したぐらいで対策という対策はしませんでした。強いて言えば、高校の授業で習ったことをより深く知りたいなと思っていろいろ文献をあさって調べるというようなことをしましたが、文献といってもアカデミックな内容ではなく科学雑誌だとかそういったものを見て知識を付けたという感じです。あとは、「学びの設計書」の推敲ですかね。あれに一番時間がかかりました。もう何回書き直したことか。正直、数え切れない回数のミスをしましたね。あと、TOEFLか、もしくはIELTSの受験が必要だったので、僕の場合はIELTSの方が何となく受験の雰囲気が合っていたのでIELTSの受験とその勉強をしましたね。

まず、何となく化学オリンピックの勉強をしていて生物系のことも比較的いろいろ有機化学とかだと生物とかにも関係があったりするので、そういうのがすごく面白そうだなと思って、医学の研究にも使えるのではないかなというのはぼんやりと感じてはいたのですけれど、具体的にどういう分野があるのかというのをまず調べて、自分が興味があるのはどの分野に当てはまるのだろうというのを調べるのが多分受験までで一番した準備ではないかなと思います。実際に受験してみると、受けたこと自体がすごく学びになったなという感じがしています。1日目の口頭試問の問題もすごく楽しかったですし、2日目の面接はどちらかというと生物に関することに近いことで、生物は一応基礎は取っていたのですけれど選択科目で履修はしていなかったので、その場で考えるというのがすごく頭を使ったし、自分で考えるというのがいい経験になったなという感じがします。

京都大学医学部(医学科)が「特色入試」に求めるもの

2日目の面接は、僕らとしては、あれは正解がないようなことを僕らは尋ねているのです。だから、自分が高校とか中学でやってきたことというのを医学の分野でどれだけ応用できるのかというのをちゃんと考えているのかどうかというのを僕らは見たいと考えています。だから、何々オリンピックに出ているのが圧倒的に有利かというとそういうわけでもない。受験者がそれまでにやって来られたものの上にどういうふうに学びを積み上げられるのかというのを主に見ています。実は1日目の口頭試問もそうで、あれはやはりどちらかというと正解よりもそれに至る過程を見ているのですね。そういう目で見ているところが割と多くて、だから、絶対的な正解が実はないような問題を僕らは準備しているのです。

それから、そういう意味でいうと、われわれは単に成績がすごくいい受験生を求めているわけではなく、「これしかやっていないけれど、これだけは絶対負けないぞ」というものを見せてほしいというのが本来の趣旨なのですが、それがあまり最近伝わっていないなと思われるので、もっと「求める人材像」の情報発信に努めなければいけないと考えているところです。

特色入試を志望する後輩へのメッセージ

今、特色入試の話を皆さんに聞いたのですけれど、ではこれからの受験を考えている後輩に、どういうメッセージを送りますか。

何というか、緊張せずに自分に自信を持って臨んでくださいと伝えたいですかね。特色入試は、それこそ今までの、先ほど先生もおっしゃったとおり正解を導くというより過程を重視するという話であったと思うのですけれど、自分の今までの知識を総動員して論理的に説明することが必要になります。これは、やはり自分に自信がないと出来ません。「取りあえず解答を書かないと」と視野が狭くなってしまったら困ると思うので、自分に自信を持ってと伝えたいですね。

受験して思ったのですけれど、やはりきっちりとした対策というのは本当になくて、その場でどれだけ思考できるかというのが大事な試験だなというのは感じたので、自分の思考力を試せる場なのではないかなとは思います。

京都大学の自由の学風に対して「自分がめちゃくちゃ合っているよ」というのをアピールする場だと思うし、それを大学側の評価を気にするのではなくて「自分はこういう人間なんだ」というのをアピールしたいなと思ったら受ける価値があると思います。

そうです。京都大学の自由な学風というのが、すごく大事なポイントです。自由というのが「何をしてもいい」というポジティブな面と、その代わり「何をやるのかを自分自身で考えて決めてください」という実は二つの意味があるので。だから、自分で何かやりたいというのだったらあちこち探してもらって、自分のやりたいことをやっているところを探して、場合によってはやりたいことがもしないのだったら自分でやってもらっても構わないという姿勢を私たちは出したいなと思っています。

「MD研究者育成プログラム」を選択した理由について

特色入試で入学された学生は、「MD研究者育成プログラム」という教育コースに必ず入ることになっています。このプログラムは、一般入試での入学者も選択することが可能です。今回、このプログラムで研究に取り組んでいる6回生の先輩お2人に来てもらっていますので、まず、何故「MD研究者育成プログラム」に入ろうと思ったのか聴かせてください。

僕は、元々医学部に入学したときに研究にすごく興味があったので、研究室にはどこかの段階で行きたいと思っていました。ですけれど、自分一人で研究室にアポを取って訪ねて行くというのはちょっと敷居が高いかなというのを思っていたところ、入学したときにこのMD研究者育成プログラムがあって、普通の授業の後に「プログラムの説明会があるよ」というのを教えていただいたので、ではそこにちょっと1回乗っかってみるかというふうに思って入りました。

それで、色々な研究室を順番に回って、実際に研究を体験していくラボローテーションがあるではないですか。

はい。

具体的に、今の研究室に行こうと決めたのは、いろいろ回ってみて、その結果という感じなんですか?

そうですね。元々、今のラボ(研究室)は数理解析系のラボでドライ。どちらかというとパソコンを使って計算するという研究室なのですけれど、一番初めに行ったのはウェットな実験系の研究室なのですよね。実験系の研究室で実験して、ただ、その実験していく中でやはり数理的なことも重要なのだなというのを感じまして、先生にお願いししてその数理の方に1回行かせていただいたという感じですね。

私は、最初入ったときは、MD研究者育成プログラムの受け入れラボには入っていない研究室で面白そうだなと思ったところに「研究してみたい」ってメールをしたのですが、私がやりたいこととマッチしていなかったようで断られました。その後、授業の後に、MD研究者育成プログラムのいろいろなラボの説明を聞いてみました。今、研究しているラボは、面白そうだなと思って、教務課の方に連絡とか仲介とかもしていただいて、それでお願いして行ったみたいな感じですね。

「MD研究者育成プログラム」で行っている研究について

現在どのような研究をしているか教えてください。

僕のしている研究は、細胞の中の遺伝発現が多細胞からなる組織の中でどのようなパターンを持っているかというのを全遺伝子にわたって求める、計測するということに関する研究を行っています。ただ、実際に計測するというのはすごく難しい技術でやっているので、僕が行っているのはその一部の遺伝子を計測して、残りの遺伝子に関してはその少ない遺伝子を情報ごとに機械学習を利用して予測するというような方法で行っています。

私は、大まかにまとめると、リンパ球の初期分化について転写発現制御の観点から研究をしています。最初のころはT細胞をやっていたのですけれど、ちょっとある転写因子が実際ノックアウトしてみるとB細胞の方によく影響が出ているということで、今はちょっとB細胞の方に手を出して研究しています。

論文の作成まで進まれていると思いますが、苦労はありますか?

仕事自体は、こなした仕事を論文にしていただいた感じなのですけれど、原稿を書いて推敲して校正してというサイクルは先生と一緒にやらせていただいています。

やってもらっているんですね。実際にやってみて大変でしたか。

すごく大変です。

私は、最初の論文は第5共著者ぐらいで、私のやった仕事は図1個分ぐらいみたいな、それぐらいの論文だったのですけれど。その後、レビュー(総論)が1本あるかなぐらいなのですけれど。そちらはある程度自分でやりました。

実際に書いてみてどうでしたか。大変だった?

そうですね。大変ですね。

基本、論文は英語ですから。

学部卒業後の将来像について

6回年生の皆さんは、卒業後はどういうふうな将来像を思い描いていますか。

私は、まず2年間初期研修して、その後で大学院に行って研究の方に行きたいなと思っています。ラボの先生には、1回臨床を見てくると、研究について違った視点で見られるというふうに奨めていただいていますので。

僕もやはり医学部に入ったということなので医療者に、医者として働きたいという気持ちはあります。なので、初期研修の後は医療の現場へ進むことを今は考えています。

今2人とも言ってくれたように、やはり医学なので実際は疾患に対して自分がどういうふうな解決策を見つけ出せるかは重要なので、臨床に行って医療の現場を見てくるというのは、すごく大事だと考えています。だから、「MD研究者育成プログラムに行ったら研究者にならなければいけない」とかいうわけでは決してない。研究者に行くための門は開いているけれども、必ずしも強制しているわけではないというところが、今回の座談会で伝えられたらと考えています。

本日は、ありがとうございました。