生化学(大阪国際がんセンター)

kao
教授 井上 正宏
Masahiro Inoue, M.D., Ph.D.professor btn

これまでにがん研究が積み重ねられてきた結果、早期がんの治療成績は飛躍的に向上したが、進行がんの治療は依然として困難で、がんは日本人の死因一位の座を占め続けている。現状を打破するためには、従来の治療法とは異なる視点の革新的な治療法を確立する必要がある。我々は、患者がん組織からがん細胞を培養する新しい方法を開発した。本来の分化形質、3次元構築を維持した培養系を利用して、がんの新しい側面にアプローチしている。

研究・教育について

大阪国際がんセンターは国内屈指のがん専門病院で、質の高い診療に裏付けられた複数科の腫瘍検体を研究材料として系統的に利用することができる。我々の開発した患者がん組織からがん細胞を培養する新しい方法(CTOS: cancer tissue-originated spheroid法)によって、がん組織の中のがん細胞をもとの性質を失わずに安定して試験管の中で純粋培養することができる。主な研究テーマは1)個人間の多様性(臨床情報にリンク付された多数のCTOSの集積、およびそれを用いた感受性試験、バイオマーカーの探索)2)がん細胞の分化能(細胞極性や分化・幹細胞性の可塑性)3)細胞集団としての刺激応答性(単細胞ではなく、細胞集団を単位とした情報伝達、機能の発揮)4)代謝(腫瘍の内部環境、特に低酸素・低栄養状態に適応するために利用する分子機構)。主な実験手法は、がん組織からのCTOSの調製、培養、保存、感受性試験、画像解析、細胞内シグナルの解析、遺伝子導入、マウス移植腫瘍作成など。様々な大学から大学院生を受け入れている。英語による論文抄読会、研究報告会を通じて、英語力の強化を図っている。

r-122図1 CTOSの調製
適切な分散操作の後、腫瘍断片(organoid)を回収する。
Organoidは数時間の後に球形(CTOS)になる。

r-122-2図2 CTOSは患者腫瘍内の癌細胞の特性を維持している。
大腸がんの多くは分化型腺がんであり、腺管構造を示す。がん細胞株は腺がんの特性を保持していないのに対して、CTOSでは腺管構造が維持されている。赤:villin, 緑:E-cadherin, 青:DAPI


研究業績

  1. Tashiro T, Okuyama H, Endo H, Kawada K, Ashida Y, Ohue M et al. In vivo and ex vivo cetuximab sensitivity assay using three-dimensional primary culture system to stratify KRAS mutant colorectal cancer. PLoS One 2017; 12: e0174151.
  2. Endo H, Okami J, Okuyama H, Nishizawa Y, Imamura F, Inoue M. The induction of MIG6 under hypoxic conditions is critical for dormancy in primary cultured lung cancer cells with activating EGFR mutations. Oncogene 2016.
  3. Okuyama H, Kondo J, Sato Y, Endo H, Nakajima A, Piulats JM et al. Dynamic Change of Polarity in Primary Cultured Spheroids of Human Colorectal Adenocarcinoma and Its Role in Metastasis. Am J Pathol 2016; 186: 899-911.
  4. Kondo J, Endo H, Okuyama H, Ishikawa O, Iishi H, Tsujii M, Ohue M, Inoue M. Retaining cell-cell contact enables preparation and culture of spheroids composed of pure primary cancer cells from colorectal cancer. Proc Natl Acad Sci USA, 2011; 108:6235-40
  5. Paez-Ribes M, Allen E, Hudock J, Takeda T, Okuyama H, Vinals F, Inoue M, Bergers G, Hanahan D, Casanovas O. Antiangiogenic therapy elicits malignant progression of tumors to increased local invasion and distant metastasis. Cancer Cell. 2009;15:220-31.

研究室

大阪国際がんセンター研究所
生化学部
部長:井上 正宏
連絡先:inoue-ma2@mc.pref.osaka.jp
井上研究室:http://www.mc.pref.osaka.jp/laboratory/department/biochem/