粒子線腫瘍学(京都大学複合原子力科学研究所 粒子線腫瘍学研究センター )

教授 鈴木 実
Minoru Suzuki, M.D. Ph.D.  (医学博士、京都大学) btn

本研究分野は、ホウ素中性子捕捉療法(以下BNCT)の臨床研究の責任分野として、医療機関と連携し臨床研究を実施してきた。それらの臨床研究の成果が、2020年6月からの医療機関における頭頸部がんに対する加速器によるBNCTの診療開始へとつながり、BNCT臨床研究業務は医療機関にバトンタッチされた。本研究分野における主たる研究は、加速器BNCT臨床につながる非臨床橋渡し研究と、BNCTのユニークさの根幹をなすホウ素中性子捕捉照射(図1)を用いて、放射線腫瘍学、放射線生物学に新しい学術的知見を見出すことである。

研究・教育について

本研究分野が実施する研究を以下に列記する

1)医療機関における加速器BNCT臨床につながる非臨床橋渡し研究
・対応疾患拡大のための正常組織に対するBNCTの感受性、耐容線量の検討
・ホウ素薬剤開発を行う研究室との、新規ホウ素薬剤開発の共同研究。
・BNCTと免疫療法の併用療法に関する基礎研究
2)放射線腫瘍学、放射線生物学研究におけるホウ素中性子捕捉照射の応用研究。
3)伴侶動物に対するBNCTの基礎研究
4)ガドリニウム中性子捕捉療法の基礎研究

本研究分野が提供する大学院教育は、放射線腫瘍学、放射線生物学研究の基本的な知識、技術の習得、その上で、国内外において生物研究利用が可能な研究所が数か所に限定される中性子線を用いたユニークな放射線腫瘍学、放射線生物学研究を、立案から実施までの研究遂行能力の育成である。中性子を使用した研究成果は、医療機関における加速器BNCTが実施されたことから、難治がん治療へ貢献することが期待される。
図2に医療機関で今後実施される加速器BNCT照射システムの概略図を提示する。

図1 ホウ素中性子捕獲反応(ホウ素中性子捕捉照射)
安定同位体である10B原子核が熱中性子を吸収後、直ちにヘリウム原子核とリチウム原子核に分裂する。それぞれの飛程が細胞1個のサイズ以下の10μmであることから、10Bを含む薬剤を標的とする細胞群に集積させると、その細胞群が選択的に照射される。

図2 加速器BNCT照射システムのシェーマ


研究業績

  1. Minoru Suzuki. Boron neutron capture therapy (BNCT): a unique role in radiotherapy with a view to entering the accelerator-based BNCT era. International journal of clinical oncology 25(1) 43 – 50, 2020
  2. Takahiro Nomoto, Yukiya Inoue, Ying Yao, Minoru Suzuki, Kaito Kanamori, Hiroyasu Takemoto, Makoto Matsui, Keishiro Tomoda, Nobuhiro Nishiyama. Poly(vinyl alcohol) boosting therapeutic potential of p-boronophenylalanine in neutron capture therapy by modulating metabolism. Science advances 6(4) eaaz1722, 2020
  3. Manjot Kaur, Paviter Singh, Kulwinder Singh, Usha Singh Gaharwar, Ramovatar Meena, Manjeet Kumar, Fumiko Nakagawa, Shangze Wu, Minoru Suzuki, Hiroyuki Nakamura, Akshay Kumar. Boron nitride (10BN) a prospective material for treatment of cancer by boron neutron capture therapy (BNCT) . Materials Letters 259, 2020
  4. Koji Ono, Hiroki Tanaka, Minoru Suzuki. Reevaluation of CBE value of BPA for hepatocytes. Applied radiation and isotopes : including data, instrumentation and methods for use in agriculture, industry and medicine 161 109159 – 109159, 2020
  5. Takao Tsurubuchi, Makoto Shirakawa, Wataru Kurosawa, Kayo Matsumoto, Risa Ubagai, Hiroshi Umishio, Yasuyo Suga, Junko Yamazaki, Akihiro Arakawa, Yutaka Maruyama, Takuya Seki, Yusuke Shibui, Fumiyo Yoshida, Alexander Zaboronok, Minoru Suzuki, Yoshinori Sakurai, Hiroki Tanaka, Kei Nakai, Eiichi Ishikawa, Akira Matsumura. Evaluation of a Novel Boron-Containing α-D-Mannopyranoside for BNCT.Cells 9(5) 2020

研究室

粒子線腫瘍学研究センター 粒子線腫瘍学研究分野
教授:鈴木 実 msuzuki@rri.kyoto-u.ac.jp 医学博士(京都大学)
助教:近藤 夏子、渡邊 翼
特定助教:玉利 勇樹、呼 尚徳、和田 悠佑、今道 祥二
URL:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/research/div/rls/prorc/pro