神経生物学

教 授 伊佐 正
Tadashi Isa M.D., Ph.D. Professor  btn

平成30年度創設の京都大学の新規WPI研究拠点・ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)の進化神経科学研究グループを兼ねている。特に霊長類で高度に進化した巧緻な運動、すなわち手指や眼球運動に関わる神経回路とその回路の部分損傷後の機能代償機構、さらには意思決定やモチベーション・注意・連合学習・意識などの認知機能のメカニズムについて多様な研究手法を融合して研究を進めている。特に、従来霊長類において困難だった光遺伝学や化学遺伝学などの先端的回路操作技術を霊長類において使用可能にする技術開発に注力している。

研究・教育について

⼤規模で複雑な脳の機能動態は、覚醒状態や注意、学習のステージといった状態に依存して変容を遂げる。このような⼤規模回路の動的変容が最も顕著に観察される例が、脳や脊髄の損傷からの回復過程ないしは精神・神経疾患である。このような機能回復にモチベーションなどの認知機能が関わるメカニズム、さらには機能回復を促進する技術の開発について、脳機能イメージング、電気⽣理学、⾏動解析、ウィルスベクターによる回路選択的操作など多様な研究⼿法を組み合わせて研究している。
⼤学院教育においては、神経⽣理学的な考え⽅や研究⼿法を徹底的に⾝につけるように指導する。⼀⽅で神経科学は、多様な研究⼿法を組み合わせて進めていく必要があることから、分⼦⽣物学などの他の⽣命科学分野だけではなく、⼯学・情報科学などの異分野の研究者との共同研究等を通じて幅広い視野を養い、海外の研究者とも積極的にコミュニケーションがとれる豊かな国際的感覚を有する研究者を育成しなくてはならない。学部教育については、学⽣諸君が、物質である脳に精神機能がどのようにして宿り、我々の⾏動や思考を制御しているのかについて考察を深められるような教育を目指したい。

脊髄損傷後の機能回復過程においては、側坐核が運動野の運動遂行中の高周波帯域の活動を促進し、手の運動の機能回復に貢献する。
Sawada et al. (2015) Function of nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science, 350: 98-101.

ウィルスベクター2重感染による霊長類での経路選択的機能遮断
投射領域に高頻度逆行性レンチウィルスベクターを注入、さらに細胞体の位置に順行性のアデノ随伴ウィルスベクターを注入し、2重感染した細胞においてのみドキシサイクリン(Dox)投与下において破傷風毒素(eTeNT)を発現させて、シナプス伝達を可逆的に遮断する。この方法を用いマカクザルの大脳皮質運動野からの運動指令を上肢筋運動ニューロンに中継する脊髄固有ニューロン(PN)を選択的に遮断することにより、手指の巧緻運動に障害を与えることが出来た。これにより、進化的に古いシステムである脊髄介在ニューロン系も巧緻運動の制御に直接関与することが証明された。
Kinoshita M et al. (2012) Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates. Nature, 487: 235-238


研究業績

  1. Kinoshita M, Kato R, Isa K, Kobayashi K, Kobayashi K, Onoe H, Isa T (2019) Dissecting the circuit for blindsight to reveal the critical role of pulvinar and superior colliculus. Nature communications, 10: 135.
  2. Tohyama T, Kinoshita M, Kobayashi K, Isa K, Watanabe D, Kobayashi K, Liu M, Isa T (2017) Contribution of propriospinal neurons to recovery of hand dexterity after corticospinal tract lesions in monkeys. Proceedings of National Academy of Science USA: 114:604-609.
  3. Sawada M, Kato K, Kunieda T, Mikuni N, Miyamoto S, Onoe H, Isa T, Nishimura Y (2015) Function of nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science, 350: 98-101
  4. Kinoshita M, Matsui R, Kato S, Hasegawa T, Kasahara H, Isa K, Watakabe A, Yamamori T, Nishimura Y, Alstermark B., Watanabe D, Kobayashi K, Isa T (2012) Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates. Nature, 487: 235-238.
  5. Nishimura Y, Onoe T, Morichika Y, Perfiliev S, Tsukada H, Isa T (2007) Time-dependent central compensatory mechanism of finger dexterity after spinal-cord injury. Science, 318: 1150-1155.

スタッフと連絡先

教授:伊佐 正
(電話; 075-753-4351, E-mail; isa.tadashi.7u(at)kyoto-u.ac.jp)
特定教授(脳機能センター):尾上 浩隆
(電話; 075-753-4353, E-mail; onoe.hirotaka.8n(at)kyoto-u.ac.jp)
特定准教授(白眉センター):武井 智彦
(電話; 075-753-4353, E-mail; takei.tomohiko.8w(at)kyoto-u.ac.jp)
講師:肥後 剛康
(電話; 075-753-4353, E-mail; higo.takayasu.8s(at)kyoto-u.ac.jp)
講師(医学教育推進センター):Zenas C. Chao
(電話; 075-753-4353, E-mail; zenas.c.chao(at)gmail.com)
助教:笠井 昌俊
(電話; 075-753-4353, E-mail; kasai.masatoshi.2s(at)kyoto-u.ac.jp)
助教:佐々木 亮
(電話; 075-753-4353, E-mail; sasaki.ryo.3r(at)kyoto-u.ac.jp)
助教(医学教育推進センター):Richard Veale
(電話; 075-753-4353, E-mail; veale.richard.7c(at)kyoto-u.ac.jp)
特定助教(ヒト生物学高等研究拠点):山口 玲欧奈
(電話; 075-753-4690, E-mail; yamaguchi.reona.3e(at)kyoto-u.ac.jp)
URL:http://nscinbiol.med.kyoto-u.ac.jp