神経生物学

教 授 伊佐 正
Tadashi Isa M.D., Ph.D. Professor  btn

神経生物学分野は、平成27年3月に退職された大森治紀教授の後任として、平成27年10月に自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)から伊佐正が着任して新しいスタートを切ることになった。動物の精緻な運動・行動を制御する神経回路の解析を基本としつつ、その損傷後の機能回復機構や機能代償のためのブレイン・マシン・インタフェースの開発、さらにはモチベーションや注意・意識・連合学習などの認知機能のメカニズムを、神経生理学的な研究手法を中心に据えながら、多様な考え方や研究手法を融合して研究を進めている。

研究・教育について

大規模で複雑なネットワークからなる脳の機能動態は、覚醒状態や注意、学習のステージといった状態に依存して変容を遂げる。このような大規模回路の動的変容が最も顕著に観察される例が、脳や脊髄の損傷からの回復過程である。このような機能回復にモチベーションなどの認知機能が関わるメカニズム、さらには機能回復を促進する技術の開発について、脳機能イメージング、電気生理学、行動解析、ウィルスベクターによる回路選択的機能操作や機械学習などの多様な研究手法を組み合わせて研究している。
大学院教育においては、神経生理学的な考え方や研究手法を徹底的に身につける一方で、神経科学は、今後一層、多様な研究手法を組み合わせて進めていく必要があることから、分子生物学などの他の生命科学分野は言うに及ばず、工学・情報科学などの異分野の研究者との共同研究等を通じて、広い視野と豊かな国際的感覚を有する研究者の育成を目指す。
学部教育については、学生諸君が、物質である脳に精神機能がどのようにして宿り、我々の行動や思考を制御しているのかについて考察を深められるような教育を目指したい。

脊髄損傷後の機能回復過程においては、側坐核が運動野の運動遂行中の高周波帯域の活動を促進し、手の運動の機能回復に貢献する。
Sawada et al. (2015) Function of nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science, 350: 98-101.

ウィルスベクター2重感染による霊長類での経路選択的機能遮断
投射領域に高頻度逆行性レンチウィルスベクターを注入、さらに細胞体の位置に順行性のアデノ随伴ウィルスベクターを注入し、2重感染した細胞においてのみドキシサイクリン(Dox)投与下において破傷風毒素(eTeNT)を発現させて、シナプス伝達を可逆的に遮断する。この方法を用いマカクザルの大脳皮質運動野からの運動指令を上肢筋運動ニューロンに中継する脊髄固有ニューロン(PN)を選択的に遮断することにより、手指の巧緻運動に障害を与えることが出来た。これにより、進化的に古いシステムである脊髄介在ニューロン系も巧緻運動の制御に直接関与することが証明された。
Kinoshita M et al. (2012) Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates. Nature, 487: 235-238


研究業績

  1. Tohyama T, Kinoshita M, Kobayashi K, Isa K, Watanabe D, Kobayashi K, Liu M, Isa T (2017) Contribution of propriospinal neurons to recovery of hand dexterity after corticospinal tract lesions in monkeys. Proceedings of National Academy of Science USA: 114:604-609.
  2. Sawada M, Kato K, Kunieda T, Mikuni N, Miyamoto S, Onoe H, Isa T, Nishimura Y (2015) Function of nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science, 350: 98-101
  3. Kinoshita M, Matsui R, Kato S, Hasegawa T, Kasahara H, Isa K, Watakabe A, Yamamori T, Nishimura Y, Alstermark B., Watanabe D, Kobayashi K, Isa T (2012) Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates. Nature, 487: 235-238.
  4. Nishimura Y, Onoe T, Morichika Y, Perfiliev S, Tsukada H, Isa T (2007) Time-dependent central compensatory mechanism of finger dexterity after spinal-cord injury. Science, 318: 1150-1155.
  5. Alstermark B, Isa T. (2012) Circuits for skilled reaching and grasping. Annual Review of Neuroscience, 35:559-578. (review)

スタッフと連絡先

教授:伊佐 正
(電話075-753-4351; isa.tadashi.7u(at)kyoto-u. ac.jp)
特定准教授:尾上 浩隆
(電話075-753-4353; onoe.hirotaka.8n(at)kyoto-u.ac.jp)
講師:小川 正晃
(電話075-753-4353; ogawa.masaaki.7m(at)kyoto-u. ac.jp)
講師(医学教育推進センター):Zenas Chao
(電話075-753-4353; zenas.c.chao(at)gmail.com)
助教:笠井 昌俊
(電話075-753-4353; kasai.masatoshi.2s(at)kyoto-u.ac.jp)
特定助教:山口 玲欧奈
(電話075-753-4353; yamaguchi.reona.3e(at)kyoto-u.ac.jp)
URL:http://www.nips.ac.jp/hbfp/