医学部長メッセージ

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京都大学医学部は、1899年(明治32年)京都帝国大学医科大学として創立された百有余年の歴史と伝統をもつ医学部です。この長い歴史の中で、本医学部には全国各地から高い志を胸に秘めた気鋭の若者が集い日々切磋琢磨し、幾多の世界に誇る指導的な医学者・医学研究者を輩出するとともに、多くの独創的な医療や研究成果を発信し続けてきました。興味のある方は「近衛町無番地」(京都大学医学部創立100周年記念アルバム)を是非一度手にとってごらんいただければと思います。この冊子の副題には「Curiosity, Challenge and Continuation」とあります。

これは創立100周年当時の医学部長であった本庶名誉教授が「3C」といって好んで使われたものですが、京都大学医学部の精神をわかりやすく表すとすれば、まさにぴったりの表現でしょう。
時代は刻々と変わっていきますが、私たちに求められていることは基本的には変わっていません。それは、人々を苦しめる多くの疾患や難病の克服に向けて持てる限りの力を尽くしていくことであり、それに必要なあらゆる素養と技術を身につけていくことです。そのためには、現在の医学・医療の最先端の知識と技術を体得していくことは必須の要件ですが、それで十分かというと決してそうではありません。なぜでしょうか。それは、医学と医療の領域にはまだ、皆さんが想像する以上にはるかに多くの「Unknown(未知)」が横たわっているからに他なりません。皆さんが膨大な量のテキストを勉学され多くの医学知識をもって実際の医療現場に出られたとしても、やがてなんと多くの「Unknown」が私たちの前に広がっていることかと立ちすくむ時が必ず来るでしょう。本医学部で私たちが本当に求められているのは、この「Unknown」に魅入られ(Curiosity)、その解明と解決をめざして果敢に挑戦し(Challenge)、その志を持続していくこと(Continuation)であろうと思います。

京都大学医学部では、医学・医療人として身につけるべき必須の系統的基礎医学臨床医学カリキュラム(講義と実習)に加え、いくつかの独自の教育プログラムを用意しています。1~2回生時から、本研究科の多様な研究室(基礎系臨床系を問わず)に一定期間入って実際の医療の現場を見、あるいは研究を経験するためのラボローテーション・システム、4回生時には夏期休暇を含め4ヶ月にわたって様々な自主研鑽(研究室での研究、学内外での医療機関における臨床実習、海外研究施設への短期留学、フィールドスタディーへの参加など)を行うことのできるマイコース・プログラム、さらに進んで高度な研究への熱意を有する学生諸君には、4回生終了時に直ちに大学院へ進学し学位を取得後再度臨床研修に戻り医師資格を取得するという、いわゆるMD・PhDコースがあります。MD・PhDコースは欧米の主要な医科大学ですぐれた医学研究者養成のためのエリートコースとしてよく知られていますが、本医学部では全国に先駆けてこのコースを設けています。しかしこれらは、あくまで学生諸君が各々の興味や関心に従って自主的に履修するものであり、決してお仕着せのカリキュラムではありません。本医学部には昔から、学生が講義の合間を縫って自由に興味のある研究室に出入りしてセミナーや研究に参加するという「風習」がありますが、これらのプログラムはこの伝統的「風習」を受け継ぐものです。

京都大学医学部の最も重要な使命は、新しい医学・医療の進歩に資するため世界をリードしうる国際的な人材を育て輩出していくことにあります。これは一に学生諸君の熱意と自主性にかかっています。あくなき情熱をもって前進しようとする学生諸君には「とことん」付き合いどこまでも支援していくことが京都大学医学部の長い歴史と伝統に外ならない、ということをご理解していただきたいと思います。

(平成26年10月1日)