大学院教育コースの設置

分野別11コース

前述の課題、今後の方向性等に対処すべく、平成17年度度より新しく分野別教育コース(横断型・系統的医学研究キャリアパス形成)を立ち上げた。概要は以下の通りである。なお平成17・18年度は文部科学省の「魅力ある大学院教育」イニシアティブの支援を受けている。

  1. 医学博士課程(4年一貫性)6専攻を医学専攻1専攻に統合し、従来の「大学院専門分野」に加えて、基礎系・臨床系・社会医学系を横断する12(平成21年度より11)の「大学院教育コース」を系統的な教育ユニットとして新たに設置し、今日医学研究者に必要とされる幅広い素養・自主性・知識・技術の系統的な修得に備える。

    発生・細胞生物学・システム生物学コース

    免疫・アレルギー・感染コース

    腫瘍学コース

    ゲノム・オミックス統計解析コース

    神経科学コース

    生活習慣病・老化・代謝医学コース

    再生医療・臓器再建医学コース

    病理形態・病態医学コース

    臨床研究コース

    社会健康医学コース

    医工情報学連携コース

     
  2. 大学院生は1つの専門分野に所属し研究するとともに、指導教員とともに研究テーマに関連のあるいずれかのコースに参加する。これにより徹底した個人指導とともに普遍性かつ広範な知識と技術を修得する。その結果、新たな視点の導入や共同研究の可能性など異なった視点からの研究展開も検討される。
     
  3. 11の大学院教育コースでは、所属分野で取得不可能な技術を参加教室での実習ローテーションにより取得するとともに、定期的に開かれるコースミーティング(研究会)で研究成果・経過を発表し、相互討論を行い、コースに参加している他分野の教員より助言を受ける。すなわち、学生の自主性に従って随時必要な視点からの適切なアドバイスが受けられる。
     
  4. 指導的研究者育成をめざす本研究科の目的に基づき、学生は、これらの場である各コースの研究発表会・ミーティングやプログラム作成などにあたり、自主的な教育・運営能力も習得する。
     
  5. 国際的コミュニケーション能力、研究・医療倫理、知的財産管理等を全コース共通の集中講義により修得する。
     
  6. コース参加教員は各コース毎にコース会議を組織し、学生の取得目標の設定、技術指導・目標達成度のチェック、集中講義、先端セミナーなどを行う。
     
  7. 学生主導による研究プログラムの作成等に必要な自習室、グループ討論室の情報機器整備も計画されている。
     

共通コース

医学研究科では、平成17年度から、上記の大学院教育コースによる月例のコースミーティング、年1から2回の合宿により、所属教室、基礎臨床の区別を超えた横断型の研究発表・検討会を実施してきた。平成19年5月1日現在、大学院生533名(のべ717名)、教員256名(のべ425名)がいずれかの教育コースに登録し、コースワークに参加している。

2年経過し、同一分野の大学院生と教員が所属教室を超えてより密接に結びつき、従来の大学院教育では飽き足らなかった学生に本コースの意義が伝わり、たこつぼ教育からの意識脱却が進んだ。また、教室間の共同研究の芽生えと研究目的と実験データについての相互点検の意識が育ってきた。また、ミーティングの運営、プレゼンテーション技術の向上等の成果が挙ってきている。

一方、このような専門別のコースを施行することによって、各コースに共通の大学院教育が必要であることも明らかになった。そのため、これまで行ってきた大学院教育コースに加え、ここで必要性が明らかになった共通教育プログラムを平成20年度から導入し、両者を統合することにより医学研究者の育成を計ろうとするものである。

共通教育プログラムには、1回生を対象とした「導入コース」と2回生を対象とした「発展コース」があり、「導入コース」は、1)研究入門 2)技術原理セミナーとトレーニング 3)シリーズ・レクチャー『ライフサイエンスの潮流』の3つより成る。

1)では実験ノートの書き方、実験データの管理、実験計画の立て方、研究倫理など大学院で研究を始めるにあたっての基本的な技能、2)では、研究技術を原理とともに学ぶ。2)の趣旨は、単なる機器使用の習得を目指すのではなく、「その実験手法、機器がどのように開発され、進展してきたのか」を成り立ちから学ぶことにある。これにより、現今の分子生物学などで見られるキット実験万能の矯正を行う。ここでは、主たる基本的実験手法(生化学実験技術、バイオインフォマティクス、形態学技術、動物実験技術、医学生物統計学など)を対象予定とする。また、3)では、サイエンスを点ではなく流れとして捉えることを学び、今後行う自分の研究の歴史的位置づけを考える能力を修得する。

また、共通教育プログラムの「発展コース」では、自立した研究者の要件(申請書の書き方、プレゼンテーション技術、論文作成、知財一般、国際コミュニケーション)を修する。履修プロセスの概念図にあるように、これらの共通教育プログラムを大学院教育コースに結合させ、これらのコースワークと所属研究室でのマンツーマンの徹底指導とを融合させることにより、専門分野での卓越した研究能力に加えライフサイエンス全体に対する幅広い知識と技能を持ち、自らの独創的分野を開拓できる国際的な人材を育成することを期す。