岩井一宏 教授が武田医学賞を受賞しました。

同賞は、医学界で顕著な業績を挙げ、医学ならびに医療に優れた貢献を果たされた学者・研究者に贈呈されるもので、今回で63回目となります。

岩井教授の受賞テーマは「直鎖状ユビキチン鎖の発見とその病態生理学研究」です。

ユビキチン修飾系はタンパク質分解と密接に関連して研究が推進され、2004年にユビキチン依存性タンパク質分解系の発見者らにノーベル化学賞が授与されています。しかし、現在では分解のみならず、多様な様式でタンパク質の機能を制御する可逆的な翻訳後修飾系であることが知られています。ユビキチン修飾系はユビキチンが数珠状に連なったポリマーであるユビキチン鎖を結合することでタンパク質の機能を制御します。細胞内には様々なユビキチン鎖が存在していますが、出芽酵母などを用いた遺伝学的な解析などから、ユビキチン鎖はユビキチンの分子内に7個あるリジン残基のいずれかを介してのみ形成されると考えられていました。しかし、岩井教授は生化学的な手法を用いて独力で非常にユニークなN末端のメチオニンを介する直鎖状ユビキチン鎖とその唯一の複合体型の生成酵素であるLUBAC(ルーバック)ユビキチンリガーゼを発見しました。

岩井教授はまず直鎖状ユビキチン鎖とLUBACの生理的・病理的役割の解析の研究を推進し、LUBACによって生成される直鎖状ユビキチン鎖はタンパク質を分解系ではなく、シグナル伝達系として働き、免疫応答、炎症、がん化などに関与する転写因子であるNF-κBの活性化、細胞死抑制において中心的な役割を果たすことを明らかにしました。

さらに、LUBACサブユニットの1つであるSHARPINを欠損した自然変異マウスは、LUBACが不安定化して減少することで自己炎症性疾患と免疫不全を併発することを示しました。この発見はヒトにおいてLUBACの他の2つのサブユニットであるHOIL-1L、HOIPの変異が自己炎症性症候群様と免疫不全を示す先天性疾患の原因となることの発見に繋がりました。加えて、LUBACの機能亢進によって惹起される直鎖状ユビキチン鎖の生成亢進が、頻度が高く、治療抵抗性の悪性リンパ腫である活性化B細胞型びまん性大細胞性Bリンパ腫(ABC DLBCL)の発症に関わり、LUBACリガーゼの機能を抑制することでABC DLBCL細胞株の増殖を抑制することを示しました。

直鎖状ユビキチン鎖、LUBACユビキチンリガーゼ研究は想定外の発展を遂げ、炎症、発がん、感染などに関与することが明確となりつつあります。このように、岩井教授の業績は我が国が世界に誇る真に独創的な研究成果の典型として高く評価され、受賞につながりました。

贈呈式は、11月12日に東京都内で執り行われる予定です。

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