岩井一宏教授、斎藤通紀教授が上原賞を受賞しました。(2019年12月20日)

同賞は、生命科学、特に健康の増進、疾病の予防、および治療に関する分野の研究顕著な功績をあげ、引き続き活躍中の研究者に贈呈されるものです。
贈呈式は、2020年3月11日(水曜日)に行われる予定です。

岩井教授の受賞テーマは「炎症応答を制御する新規ユビキチン修飾系の発見とその病態生理学研究」です。

タンパク質分解系と密接に関連して研究されてきたユビキチン修飾系は、現在、多彩な様式でタンパク質の機能を制御する可逆的な翻訳語修飾系であることが知られています。岩井教授は、従来のリジン残基を介して形成されるポリユビキチン鎖とは異なり、N 末端のメチオニンを介して形成される直鎖状ユビキチン鎖の存在を世界に先駆けて発見し、その唯一の生成酵素であるLUBAC 複合体(HOIL-1L、HOIP、SHARPIN の3 量体)を同定しました。岩井教授は、直鎖状ユビキチン鎖は細胞内の最も重要なシグナル伝達系の一つであるNF-κB 経路を正に制御し、プログラム細胞死を抑制すること、SHARPINの欠損は免疫不全や自己炎症症状を惹起することを明らかにし、その後、直鎖状ユビキチン鎖の恒常性の破綻は、ヒトの様々な疾患の原因となることが次々と明らかにされてきました。ユビキチンの分野に全く新しい概念を導入した我が国が世界に誇れる真に独創的な研究業績として受賞されました。

 

斎藤教授の受賞テーマは「生殖細胞の発生機構の解明とその試験管内再構成」です。

生殖細胞の発生機構の解明は、医学・生命科学における最も本質的な研究課題の一つです。斎藤教授は、単一細胞発現遺伝子解析法を用いて、マウス始原生殖細胞特異的に発現する遺伝子群(Blimp1, Prdm14, Stella 等)を同定し、その機能・制御機構を解明しました。斎藤教授は、その知見を基に、マウス多能性幹細胞から始原生殖細胞様細胞(primordial germ cell-like cells: PGCLCs)を試験管内で誘導し、精子や卵子、健常な産仔を作出することに成功、エピゲノムリプログラミングや卵母細胞決定・減数分裂誘導機構など、有性生殖の根幹となる現象の原理を解明しました。斎藤教授は、カニクイザル初期胚における多能性細胞系譜の発生機構を解析し、マウス・サル・ヒトにおける多能性スペクトラムの発生座標を解明、霊長類の生殖系列の起源を同定するとともに、ヒトiPS 細胞からPGCLCs、さらに卵原細胞を誘導し、ヒト生殖細胞発生過程の試験管内再構成の礎を築きました。斎藤教授の業績は、ヒトや霊長類の進化機構を明らかにするのみならず、不妊やエピゲノム異常・遺伝病の原因究明に繋がることが期待される、世界を牽引する確固たる研究業績として、本賞に選考されました。

関連リンク
上原賞(公益財団法人 上原記念生命科学財団Webサイト)
https://www.ueharazaidan.or.jp/index.html