岩井 一宏 教授が持田記念学術賞を受賞しました。

岩井 一宏 教授が持田記念学術賞を受賞し、平成29年11月9日に表彰式が行われました。

持田記念学術賞は、生命科学を中心とする医学、薬学及びこれに関連する物理学、化学、工学、生物学等の先見的独創的研究を育成し、かつ、これらの成果を総合して医療をはじめとするヘルスケアに応用し、もって我が国の医療及び国民の保健の向上に資することを目的に昭和59年に創設された毎年2名が顕彰される賞です。今回、岩井教授は「慢性炎症・免疫制御・癌化に関わる新規ユビキチン修飾系の発見とその疾患への関与に関する研究」の研究テーマで受賞しました。

タンパク質は私達の身体で色々な役割を果たしていますが、いつも機能しているのではありません。ユビキチンは状況に応じてタンパク質に結合することで、その機能を制御している翻訳後修飾因子と呼ばれる分子であり、ほとんどの場合、数珠状に連なったユビキチン鎖の形で結合しています。ユビキチン鎖はユビキチンに7個存在するリシン残基のいずれかを介して形成されると考えられてきましたが、岩井教授はN末端メチオニンを介した直鎖状ユビキチン鎖が存在することと、直鎖状ユビキチン鎖を選択的に生成するLUBACユビキチンリガーゼを発見し、ユビキチン研究に新しい概念を導入しました。

岩井教授は直鎖状ユビキチン鎖とLUBACの生理的・病理的役割の解析の研究を推進し、免疫応答、炎症、癌化などに関与する転写因子であるNF-κBの活性化に関与することを見出しました。さらに、LUBAC ユビキチンリガーゼの活性低下が免疫不全を伴った自己炎症性症候群の原因となることや、日和見感染症を惹起する真菌であるアスペルギルスはLUBACの機能を抑制することで感染する可能性を示唆する発見をしています。加えて、岩井教授はLUBAC の活性亢進が、B細胞リンパ腫の発症に関与することを明らかにしました。

このように岩井教授の業績は、癌、炎症性疾患等に苦しんでおられる多くの人たちに福音をもたらす可能性を秘めた壮大なポテンシャルを持つ研究成果であり、すでに、製薬企業で直鎖状ユビキチン鎖生成阻害薬の開発が進められています。