第30回健康科学市民公開講座開催報告

学術委員会委員長 検査技術科学コース 教授 精山明敏

 平成29年11月18日(土)に第30回健康科学市民公開講座を開催いたしました。今回取り上げたテーマは「ITが医療を変える-地域完結型医療の現在と未来」です。科学技術が身近なものになってきた現代、医療が大きく変わろうとしています。人工知能(AI)や情報技術(IT)が これからの地域医療をどのように変えていくのか、ビッグデータ医療や医療情報技術の現在と未来をテーマに、今後の社会・医療のあり方を考えることを目的として企画いたしました。
当日は雨で今シーズン一番の冷え込みにもかかわらず、107名の方にご参加いただきました。医学研究科長上本伸二教授、人間健康科学系専攻長足立壯一教授の開会挨拶に引き続き、4名の講師の先生にご講演いただきました。

 第1講では、京都大学医学研究科人間健康科学系専攻(ビッグデータ医科学分野)の奥野恭史教授から「人工知能・スーパーコンピュータが拓く医療の未来」と題してご講演いただきました。本講演では、奥野教授のグループが現在取り組まれている、京都大学医学部附属病院の実臨床データを用いた医療ビッグデータ解析・医療シミュレーションのほか、スーパーコンピュータを用いた創薬シミュレーション・ビッグデータ創薬の新たな方法論開発や今後の医療応用への展望についてお話しいただきました。

 

第2講では、立命館大学サステイナビリティ学研究センター教授、京都大学医学研究科客員研究員であるとともに、スリランカ国総理大臣上席補佐官(科学技術担当)を兼務されているモンテ・カセム教授に「ビッグデータと医療:患者を中心軸にした情報融合がもたらす先端性―脳卒中・脳梗塞の医療現場からの教訓」と題してご講演いただきました。情報を敏感に収集するセンサーの多様化やインターフェースの使いやすさによって大量にリアルタイム情報が我々の日常的判断を支えてくれるようになったビッグデータの時代に、患者を中心軸に置いた医療とはどのようなものか、また、医療現場がどのように対応すれば良いかについて、ロンドン大学キングスカレッジ病院で開発運用されてきた「TACMIS(トータルアクセス介護医療情報システム)」をもとにお話しいただきました。

 第3講では、京都大学医学部附属病院・医療情報企画部長・病院長補佐、医学研究科・医療情報学分野および情報学研究科・医療情報学講座を兼務されている黒田知宏教授から「医療情報技術が拓く近未来の医療」と題してご講演いただきました。情報通信技術(ICT : Information and Communication Technology)の急速な発達にともなう医療現場の情報化への取り組みを、京都大学医学部附属病院におけるこれまでの取組事例や、今後の展望も含めて、特に、今話題の「モノのインターネット(IoT : Internet of Things)を使った、人に優しい情報サービスを提供するシステム(ユビキタス情報システム)への取組を中心に、未来の医療の姿についてお話しいただきました。

 第4講では、滋賀県病院事業庁・庁長のほか滋賀県立成人病センター・特別顧問を兼務されている笹田昌孝京都大学名誉教授に「2025年問題をクリアする-医療現場のIT活用-」と題してご講演いただきました。2025年を8年後にひかえ、予測される多くの課題に対して有効な具体策をすみやかにスタートさせるために、ITが担う役割とその具体例について医療現場から提案いただきました。また、今回の市民公開講座のキーワードの「情報」は、施設・システム・人材いずれの構築にも不可欠であり、医療情報技術の活用は地域で生活する人々が、三世代が揃って日々健康的な生活を送ることを目標とするためにあることをお話しいただきました。

今回の健康科学市民公開講座のアンケート(回収率84%)については、「大変よかった」53、「よかった」26、「ふつう」1、「良くなかった」1、「無回答」9という集計結果でした。個別のコメントとしては「社会的価値創出に対する具体的な施策をわかりやすく説明頂けた」、「対症療法医療環境のAIによる革新だけでなく予防医療の知見も得られた」などの内容へのご意見の他、「今、大変注目されているテーマだから」、「過去のテーマ一覧を見、今年は格段に時代に即した画期的なテーマと思った」、「社会の中で注目され、話題として挙げられている」など今回のテーマについても大変好意的なご意見を多数いただきました。
次回以降の希望テーマについても沢山のご意見をいただきましたので次回へ引き継ぎたいと思います。