第29回健康科学市民公開講座開催報告

委員長:鈴木 真知子
委員:笹山哲、上久保靖彦、古田真里枝、山田純栄、大畑光司

平成28年11月5日(土)に「みんなの笑顔と社会・医療の課題」をテーマに第29回健康科学市民公開講座を、杉浦ホールで開催致しました。今回は、周産期メンタルヘルスなどでご活躍中の広尾レディース院長、宗田聡先生を東京からお迎えし、お母さんやお父さんになる人たち、あかちゃんなどの子どもをめぐる現状から、特に社会的に大きな課題になっている障がい児のことや、不妊症、産後うつと虐待について、それぞれの講師からお話しいただき、今後の社会・医療のあり方を探る機会として企画致しました。特に、公開講座のチラシは、テーマに関心をもっていただくために、24時間の人工呼吸管理を自宅で行っている脊髄性筋委縮症のお子様に視線でパソコンを操作し、可愛らしい色合いのイラストや子どもの気持ちを書いていただきました。

当日は快晴に恵まれ、建物の中にいるのが「もったいない」天候でした。小児に関連したテーマは、参加者が少ないという前評判から参加状況を心配していましたが、70名の市民の方々、公開講座担当教員と職員10名に加え、学内から学生や教員の参加もあり、会場はほぼ満席となるご来場がありました。

専攻長の開会挨拶では、本専攻の改組への取り組みの紹介と共に、少子化問題をはじめとする周産期に関する話題がいかに重要であるかが述べられました。

続いて、本公開講座の企画・運営責任者より、少子化のその一方では、医療的なケアを必要とする重度の障がいを有する子どもの数が増加しており、最近では、新たな課題として、重症心身障害児ではなく、高度医療依存児という「歩けて話せる超重症児」の増加が認められており、小児在宅医療のさらなる進展が求められているという説明がありました。

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次に、少子化にも関連する話題として、講演1.では、本専攻家族看護学講座教授による「不妊症をめぐる課題」について、不妊治療の新たな展開である未受精卵凍結保存や卵子バンク、子宮移植の現状などが分かりやすく解説されました。子どもが得られないご夫婦には、大きな希望につながる研究の方向性と医療技術の進歩を知ることができました。
講演2.では、宗田先生より、母児関係と産後のメンタルヘルス、子ども虐待のリスク要因と予防、産後うつの定義、早期発見、予防対策などを、分かりやすくまた、身近な問題として解説していただきました。それらより、妊娠期から始める早期育児支援と共に、妊娠前から妊娠と精神疾患について啓蒙していくことの重要性、他業種や地域との常日頃からの連携、産後の継続的な支援と、望む人が産みやすく育てやすい社会環境を整えることの大切さに人々が関心を向けるように社会を変えていくこと、地域の人々が支え合うコミュニティ作りの大切さを再認識できました。

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ご来場者からは、1. 将来、男性のみで子孫を残せる可能性があるのか、2. 自然妊娠と人工授精で妊娠した子どもの将来に健康面での違いはないのか、など不妊治療の進歩への期待と不安に基づく質問と意見交換がなされ、瞬く間に時間が過ぎ、閉会となりました。

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アンケートでは、56名から回答をいただき、良かったと回答した方が、50名と大半を占めていました。その理由は、「知らなかった最近の知見を得ることができた」「私が将来子供を産むときの勉強になった」「関心のあるテーマ」「とてもわかりやすい解説で、知らなかったことを知ることができた」「これからの私にとって、とても大切なこと」などが多く、本テーマを取り上げた意義が確認できました。このことは、今後要望するテーマ;不妊治療の日本と他国の現状、再生医療、高齢出産、視覚や聴覚に障害のある方の住みやすい街づくり、などからも窺えました。このような状況を受け、今後の企画として、小児在宅医療や周産期医療に関連したテーマも積極的に組み入れて検討するよう、次期公開講座を担当する委員に引き継いでいきたいと思います。

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